連載:GIANTS with〜巨人軍の知られざる舞台裏〜

ジャイアンツが「青色」伝統超えた“感謝”  忘れ得ぬ2020年…優勝グッズに込めた思い

小西亮(Full-Count)

今季のシンボル的な役目を果たしたマスク

今年世界中で多くの需要が生まれた「マスク」。優勝時に監督や選手たちもつけていたオレンジ×黒のデザインや他にも多くの種類が製作された 【写真は共同】

 さらに今季、圧倒的に要望が多かったのが「マスク」。ドラッグストアなどの店頭から消えたこともあったコロナ禍の必需品は、感染予防を徹底するチームとしても欠かせないアイテムだった。「試合を球場で観戦いただけるようになった時に絶対必要になる」。製作を担当したのは大湾さんだった。無数のメーカーから千差万別の商品が発売される中、ジャイアンツの冠をつけて出すマスク。公衆衛生の専門家を招いて助言を受けながら、慎重に形や性能を検討していった。

 有観客での開催が解禁された7月に発売。「ちょっと強気に発注してみたんですが、想定以上の販売数になりました」と大湾さんは胸を張る。東京ドームで購入してすぐに、マスクを着けるファンの姿も。衛生用品であるとともに、応援グッズのひとつになった。その後もさまざまなタイプやデザインを発売した。

 マスクは、今季の戦いのシンボル的な役目も果たすことに。コロナ禍をファンとともに乗り越えようと球団総がかりで立ち上げた「WITH FANS」プロジェクト。優勝決定の瞬間に原辰徳監督ら関係者がつけていたマスクも、その結晶のひとつだった。ファンから寄せられたデザインで、オレンジと黒を配色して“つながり”を表現。我慢の春、試行錯誤の夏、喜びの秋へと続いてきたストーリーを完成させた。

グッズでつながる「巨人」と「ファン」

 チームの戦いは、日本シリーズへと続く。コロナとの戦いは、もっと続く。それでも、観客がぐっと増えたスタンドの光景を見ると、大湾さんの表情は自然と緩む。

「やっぱり、球場に満員のお客さんが入って、盛り上がってもらうことが一番。自分が作ったものを買って応援してくれる姿を見ると、素直にうれしい。『いいね』と言ってもらえるものもあれば、『こうだったら良かったのに』という意見もある。それが、すごく面白くて」

 モノを売る。それだけでは、あまりに味気ない。支えてくれるファンの思いを受け止めながら、ファンに伝えたい思いも同時に届ける。距離をとる必要性に迫られたシーズンだったからこそ、身に染みて学んだ。

 マウンド付近で原監督が胴上げされる瞬間、東京ドームはオレンジ色に揺れていた。巨人とファン。両者をつなぐ絆の形が、ひとつひとつのグッズであってほしいと願っている。

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著者プロフィール

1984年、福岡県出身。法大卒業後、中日新聞・中日スポーツでは、主に中日ドラゴンズやアマチュア野球などを担当。その後、LINE NEWSで編集者を務め、独自記事も制作。現在はFull-Count編集部に所属。同メディアはMLBやNPBから侍ジャパン、アマ野球、少年野球、女子野球まで幅広く野球の魅力を伝える野球専門のニュース&コラムサイト

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