ラ・リーガの粋な計らいで開幕 久保、岡崎、乾の“デルビー・ハポネス”

工藤拓

今季ラ・リーガ1部には岡崎慎司(左)、久保建英(中央)、乾貴士(右)の3人が参戦。開幕戦ではビジャレアルとウエスカが対戦する 【Getty Images】

 ラ・リーガ2020-21シーズンが9月12日に開幕する。ラ・リーガはオフの間も話題が尽きなかった。久保建英の移籍報道に加え、リオネル・メッシのバルセロナ退団騒動と、連日メディアを賑わせた。最終的に久保はビジャレアルに新天地を求め、メッシはバルサ残留を発表した。

 そして迎える新シーズン、開幕戦ではビジャレアルと岡崎慎司が所属するウエスカが激突。さらに第2節ではビジャレアルと乾貴士のエイバルが対戦と、日本人対決が続く。ラ・リーガの粋な計らいか、日本のファンにとってこれ以上ない注目カードが早々に実現するところに、日本市場への本気度が伝わってくる。新シーズンの見どころ、“デルビー・ハポネス”(日本人ダービー)での計画について、ラ・リーガ国際部門・日本担当のギジェルモ・ペレス・カステージョ氏に聞いた。(取材日:2020年9月10日)

キックオフカンファレンスにイニエスタ

キックオフカンファレンスにはラ・リーガ公式アイコンのイニエスタがリモートで出演 【スポーツナビ】

――9月7日にメディア、スポンサー向けに行われた「ラ・リーガ・キックオフカンファレンス」の狙いを教えてください。

 我々はメディア向けのイベントを頻繁に行っています。スペイン国内だけでなく、ラ・リーガが視聴されているすべての国々に対して情報を発信していくことは、我々にとって重要なことです。キックオフカンファレンスは何シーズンも開催してきた開幕前の恒例イベントで、主にメディアに向けた内容になっています。ただ、我々が行うイベントでは、常にブロードキャスティングパートナーやスポンサーに何らかの形で恩返しをすることも意識しています。

――どのような内容だったのか、可能な範囲で教えてください。

 もちろんです。イベントにはラ・リーガのハビエル・テバス会長、日本でも間違いなく有名なアンドレス・イニエスタ(ヴィッセル神戸)、イケル・カシージャスら「ラ・リーガ公式アイコン」、そしてラ・リーガのアンバサダーを務める元選手たちが参加しました。

 内容的には昨季の振り返りもありますが、何より新シーズンに関する新たな情報を伝えることがメーンテーマです。新加入選手やタケ・クボ(久保建英)のようにブレークが予想される若手選手についての展望、そして試合のテレビ中継に導入される最新テクノロジーの紹介もありました。今季も当面は無観客での開催が続きます。我々はファンが自宅でより質の高いオーディオビジュアルコンテンツを楽しめるよう、今まで以上に努力しています。

――カンファレンスにも出演したイニエスタら「アイコン」や「アンバサダー」はどんな役割を担っているのでしょうか?

 当然のことですが、ラ・リーガの顔となるのは選手たちであり、彼らはかつてラ・リーガの顔だった有名選手たちです。彼らは我々のブランドを広め、あらゆるプロモーション活動を手助けしてくれます。スペイン国内ではそんなに苦労しませんが、他国の視聴者にラ・リーガのブランドを広めていく上では、知名度の高い彼らの存在が大きな助けとなるのです。

新たなバルサに多くのファンが注目

メッシは退団騒動で揺れたが、最終的には残留を決意。新シーズンはどんなプレーを見せてくれるのか 【写真:ロイター/アフロ】

――今季のラ・リーガは準備期間の短さ、過密スケジュール、終わりが見えないパンデミックの脅威など、多くの不安要素を抱えて開幕します。

 昨季の再開後もそうでしたが、おっしゃる通り通常とは大きく異なるシーズンになります。誰もが同様の影響を受けることになりますが、重要なのはスポーツ界が一丸となり、ベストの方法でコンペティションを開催することです。昨季はそれができましたが、ラ・リーガだけでなくフットボール界全体の成功だと言うべきでしょう。

 今季もプレシーズンから異例の状況が続いていますが、ラ・リーガも各クラブもよく順応できたと思っています。長距離移動を避けるべくプレシーズンマッチは近場のチーム同士で行い、近年は恒例となっていた国外への興行遠征も断念しました。各クラブが見せた対応力は評価すべきだと思います。今はどのクラブも開幕を心待ちにしているはずです。

――リオネル・メッシの退団騒動はプレシーズンの大きな話題となりました。ラ・リーガにとってメッシ残留はどのような意味を持ちますか?

 もちろん、我々にとって喜ばしいことです。ラ・リーガには常に世界最高の選手たちが在籍してきました。メッシはそのひとりであるだけでなく、フットボール史上最高の選手と表現しても過言ではありません。その彼が残ってくれたことはラ・リーガにとってありがたいことであり、この先何年でも残ってもらいたいと思っています。とはいえ、彼がいなくなる日は必ず来る。重要なのはラ・リーガが特定の選手やクラブの人気にイメージを左右されないよう、何年も前からリーグ全体の価値を高める努力を続けてきたことです。

――今季はどんなシーズンになると思いますか?

 新たなバルセロナがどうなるのかは、多くのファンが注目している要素のひとつでしょう。メッシが残り、(アントワーヌ・)グリーズマンや(フィリペ・)コウチーニョもいるチームを、(ロナルド・)クーマン監督がどのようにまとめるのか。17歳のアンス・ファティもバルサ、スペイン代表の双方でスペクタクルなプレーレベルを保っています。今季のバルサが大きな興味の対象となっていることは確かだと思います。

 とはいえ、それだけではありません。例えば日本ではビジャレアルに加入したクボが注目されています。ビジャレアルはテクニカルなフットボールを実践しているチームであり、クボもそのボール扱いで見る者を楽しませてくれる選手です。両者の相性は間違いなく良いでしょう。しかもビジャレアルは(ダニエル・)パレホや(フランシス・)コクランも獲得しており、本気で上位進出を狙っています。

 昨季のヨーロッパリーグを制し、今季はチャンピオンズリーグに挑戦するセビージャも、個人的に現時点ではヨーロッパで最も力のあるチームのひとつだと考えています。リーグ再開後の戦いぶりは信じられないものでした。

 他にも面白そうなチームはたくさんあります。昇格組の3クラブもそうです。ウエスカの一員として初めて1部でプレーするシンジ・オカザキ(岡崎慎司)の活躍も楽しみですよね。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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