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中村憲剛、復活への道
中村憲剛が語る301日ぶりの復帰戦
天の配剤、そして妻との会話…

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J1第13節・清水戦で復帰した中村憲剛は、試合終了の笛を聞くと、等々力の神様に感謝するように天を仰いだ
J1第13節・清水戦で復帰した中村憲剛は、試合終了の笛を聞くと、等々力の神様に感謝するように天を仰いだ【(C)Suguru Ohori】

 その瞬間、中村憲剛の全身は高揚感と緊張感に包まれた。久々に抱いた感覚だった。


 J1第13節の清水エスパルス戦を翌日に控えた8月28日、全体練習が終わると、寺田周平コーチがメンバー入りする選手の名前を呼び上げていく。今シーズンの川崎フロンターレの慣例だった。


「憲剛」


 その日、試合に出るメンバーに混ざって少しだけ練習していたこともあり、予感はあった。だが、実際に名前を呼ばれたことで自然とモードが切り替わるのが分かった。


「いつもなら、メンバー発表の後は試合に出ない選手たちで練習していたんですけど、メンバー入りをしたのでコンディショニングをしていく方になるわけじゃないですか。そこで見える景色がちょっと変わったというか。初めて緊張感を覚えました」


 ホームゲームの試合前日、自分はどう過ごしていたのだろうか。約10カ月ぶりのことに少しだけ戸惑う自分がいた。

長男と交わした10カ月ぶりの儀式

 練習が終わりクラブハウスに戻ると、副務の渡辺翼が「憲剛さん、今日は、寮で夕飯を食べますよね?」と聞いてきた。そう言われて、ホームゲームの前日は家族に気を遣わせないために、寮で食事をするようになっていた習慣を思い出した。


「そうか。じゃあ、お願いしようかな」


 そう返事をした中村はその夜、寮で夕飯をとった。名前を呼ばれてから寝るまでの間、頭の中はいろいろなシミュレーションをしていたが、最終的には、「ここまで来たら自分を信じて思い切りやろう」と思って、眠りについたという。


「朝起きたときには、いつもの試合当日の空気でした。いつも生活している場所なのに公式戦になったというだけで家の中の空気が変わりました。たぶん、前日からスイッチが入っていたんだと思います。全部、こんな感じだったなって思い出しながらやっていましたけど、17年間やってきた生活リズムなので、やっぱり染みついていましたよね」


 前日の夕方、習い事終わりで父親がメンバー入りしたことを母親から知らされた長女は、号泣したという。翌朝、その長女に焼いてもらった朝食のパンを食べ終えると、家族5人で近所の神社に出かけ、お参りをした。それも約10カ月ぶりに行う試合当日の習慣だった。


 子どもたちはサッカーの試合があったため、中村より一足先に出かけていった。長男とはそのとき、試合当日にやっているちょっとした儀式を行った。お互いに片手を突き出し、リズミカルにパンっと叩いたり、グーにして上に乗せたり、クロスさせたりする、映画のワンシーンでよく見る“あれ”だ。昨年の11月2日以来だったが、息はぴったり合っていて、長男は「久しぶりにパパとやれてうれしかった」と教えてくれた。

原田大輔

1977年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めた後、2008年に独立。編集プロダクション「SCエディトリアル」を立ち上げ、書籍・雑誌の編集・執筆を行っている。ぴあ刊行の『FOOTBALL PEOPLE』シリーズやTAC出版刊行の『ワールドカップ観戦ガイド完全版』などを監修。Jリーグの取材も精力的に行っており、各クラブのオフィシャルメディアをはじめ、さまざまな媒体に記事を寄稿している。

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