コロナ禍のパラスポーツ界、現状は? 試合はないが…スポンサー獲得の成功例も

瀬長あすか

コロナ禍の中でパラスポーツ界がおかれた現状とは? 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 2015年に発足した時限組織である日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)は、この8月25日に開幕予定だった東京2020パラリンピックを社会変革の最大のチャンスと捉え、大会を盛り上げようと活動してきた。しかし、新型コロナウイルスの影響で東京2020大会の開催は1年延期された。先行きが不安視されるなかでパラスポーツ界が置かれている状況とは? 競技団体を物心両面でサポートする推進戦略部ディレクター金子知史さんに聞いた。

練習拠点が一時閉館……競技活動に影響も

――新型コロナウイルスがスポーツ界に暗い影を落とし、今年2月ごろからパラスポーツの大会やイベントも軒並み中止や延期になっています。パラサポは設立以来、学校や企業、自治体などにパラスポーツを活用した教育・研修事業を行ってきましたが、どんな影響が出ていますか。

 パラサポは、ボートレースの収益で公益活動をする日本財団が設立し、「パラスポーツを活用した教育・研修事業」と「パラリンピックスポーツの基盤強化」に主眼を置いた活動をしています。そのうち、今年3月に5回目を迎える予定だった「パラ駅伝」という大規模なパラスポーツ普及イベントを中止にし、新型コロナウイルス感染拡大の状況を注視しながら対応に当たっていました。加えてダイバーシティー&インクルージョン社会(一人ひとりの違いを認め、誰もが活躍できる社会)実現を目指し、パラアスリートの出前授業や障がい者とのコミュニケーション方法などを学ぶ研修プログラムなども多数実施しているのですが、それも3月には実施件数ゼロという事態になりました。

 もちろんパラリンピック本大会に向けた盛り上げ策についても議論をしていましたので、3月24日に東京2020大会の延期が決定したことで、それはいったん白紙にせざるを得えませんでした。

――コロナ禍では選手たちの練習場所確保も簡単ではありません。パラサポが運営する「日本財団パラアリーナ」は、東京パラリンピックにおける競技強化の重要な拠点でした。現在の状況を教えてください。

 2018年6月、東京・台場の「船の科学館」の敷地スペースにオープンした日本財団パラアリーナは、パラスポーツ専用体育館として、東京パラリンピック実施競技の競技団体、そのクラブチームや所属選手が日常的に利用していました。とくに、車いすバスケットボールや車いすラグビー、ボッチャ、パワーリフティングなどの競技の利用率が高く、稼働日率はほぼ100パーセント。そのような状況ではありましたが、4月3日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う病床不足解消の一手として、パラアリーナ施設も提供されることが日本財団から発表されました。4月下旬から一時的に利用できなくなっていて、再開の目途は立っていません。

 体育館にはすでに仕切りやベッドが整備されており、きょう時点(取材日:8月7日)でまだ利用者はいませんが、感染者は日に日に増えている状況なので、正直なところ、いつ患者さんが入ってもおかしくないと思っています。

強化拠点となっているパラアリーナは現在、新型コロナの感染拡大に伴う緊急支援として病床などが整備されている 【写真:ロイター/アフロ】

――パラスポーツの現場からの声はどのようなものでしたか。

 一時閉館が発表される前に、主な利用団体の皆さんには電話で連絡しました。当然ながら、諸手を挙げて閉館を歓迎するという方はいませんでしたが、「世界の状況を見ても仕方がない」「今は安心安全な社会を取り戻すことが最優先」だと理解してくださいましたね。

 まだまだスポーツ活動が制限されていますので、「パラアリーナがないとすごく困る」という声はいただいていません。ただ、専用のベンチ台を使用して重りを持ち上げるパワーリフティングの競技団体からは、同様の練習場所を確保したいとの要望があり、現在も練習場所を探すお手伝いをしているところです。

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著者プロフィール

1980年生まれ。制作会社で雑誌・広報紙などを手がけた後、フリーランスの編集者兼ライターに。2003年に見たブラインドサッカーに魅了され、04年アテネパラリンピックから本格的に障害者スポーツの取材を開始。10年のウィルチェアーラグビー世界選手権(カナダ)などを取材

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