コロナ禍のパラスポーツ界、現状は? 試合はないが…スポンサー獲得の成功例も

瀬長あすか

新型コロナで競技団体支援に影響は?

競技団体支援もパラサポの主な活動の1つ。共同オフィスには29団体が入居している(写真は2015年のもの) 【写真:アフロスポーツ】

――パラリンピック競技団体の運営支援も、パラサポの軸となる活動です。29の競技団体が入居している共同オフィスは今どのような状態なのでしょうか。

 日本財団ビル(東京・港区)の1フロアにパラリンピック競技団体との共同オフィスを設けていますが、東京都緊急事態措置を受けて4月7日から5月末にかけての約8週間は出勤可能日を限定するなどの対応をしていました。6月以降も、全体の半数以上の競技団体スタッフが在宅勤務に切り替えていたため、オフィスの人出は多くありません。2022年に北京冬季パラリンピックを迎える冬季競技団体のスタッフも、多くが在宅勤務です。

――パラサポは、かねてよりぜい弱な組織基盤の競技団体をバックアップし、東京パラリンピックの後も持続可能な運営体制を整備することがパラスポーツ発展のカギを握ると訴えてきました。東京2020大会延期の決定は、各競技団体の運営にどんな影響を及ぼしていると見ていますか。

 各競技会も中止や延期を余儀なくされている状況なので、強化が予定通り進まない。それが競技団体が最も困っていることだと思います。7月には複数の競技団体が強化合宿を再開させたものの、全国から選手を集めることはリスクがあり、非常に苦慮されています。パラサポは強化には関与しておらず、直接お手伝いができずにもどしかしいのですが、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況が日々刻々と変化する中で強化を推し進めていく難しさはよくわかります。

――そんな中、競技団体にどんな支援をされていますか?

 まずは財政面のバックアップです。パラサポは2015年度から、事務所スペースの無償提供に加え、スタッフの雇用や普及活動に活用できる助成を行っていますが、2020年度は3億1800万円の予算を編成しています。実は、ちょうど新型コロナウイルスが国内で流行し始めた2月に今年度の助成金の申請を受け付けて3月に採択するスケジュールだったため、審査は難航しました。新型コロナウイルスの流行がなければ、東京2020大会が開催される年度の助成ということで、東京パラリンピックを盛り上げる取り組みへの支援が大部分を占めるだろうと想定していましたから。ただ、リアルイベントや海外に渡航する事業の採択は見送ることにした一方、1団体につき年間660万円程度の人件費をほぼ満額採択することができたのは良かったと思います。東京パラリンピックを目前にしながら、財源が枯渇し、事務局の仕事が回らなくなる事態になっては元も子もありませんからね。

 今後はスピーディーかつ柔軟な対応も求められると思います。新型コロナウイルスの状況も鑑みて新しい枠組みの助成を創設しなくてはならないかもしれませんし、パラサポも2021年度までの時限組織なので、東京2020大会延期に合わせた延期プランについても日本財団と協議している最中です。

「こんな時だからこそ応援したい」との声も

「こんな時だから応援したい」と新たな企業がスポンサーに名乗り出た例もあると、パラサポの金子知史さんは話す 【スポーツナビ】

――競技団体の財政を支えるスポンサー離れを懸念する声もあります。

 たしかに競技会が中止になったりしてスポンサーの露出が減る心配の声も聞きますし、コロナ禍で業績が悪化したことでどうしてもスポンサーを続けられないという企業もあるようです。それでも、スポンサーが全社いなくなって大打撃を受けた、という競技団体の話は今のところ聞きませんね。むしろ「こんな時だから応援したい」と新たな企業がスポンサー契約を結んでもらったという競技団体があるほどです。オリンピックと比べて、パラリンピックの競技団体を支援する企業には、広告効果にとどまらない、社会的意義という観点から応援したいと考える企業も多いのではないでしょうか。

――最後に、今後に向けての思いをお聞かせください。

 パラサポは、東京2020大会開催の可否に関わらず、競技団体が継続的に発展できるようにスポンサー獲得のお手伝いをする準備も進めています。誰もが輝けるインクルーシブな社会の実現には、パラリンピックについて知ってもらい社会変革へとつなげる意義が大いにあると考えています。困難な時だからこそ、パラアスリートのポジティブな姿勢やパフォーマンスから何か気づけることがあるはずです。これからもパラスポーツの価値を最大限にお伝えできるように、発信を続けていきたいと思っています。

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著者プロフィール

1980年生まれ。制作会社で雑誌・広報紙などを手がけた後、フリーランスの編集者兼ライターに。2003年に見たブラインドサッカーに魅了され、04年アテネパラリンピックから本格的に障害者スポーツの取材を開始。10年のウィルチェアーラグビー世界選手権(カナダ)などを取材

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