僕が47歳でプロ野球現役復帰宣言したワケ すべてはインスタから始まった
まえがき
2019年11月12日、インスタに「もう一回、プロ野球選手になろうと思います」と投稿した新庄さん。その気持ちに至った胸中などを語ってくれた 【写真:京介】
朝、目をさましたぼくは、すぐさま外に飛びだした。
そしてインスタグラムを通じて、みんなにメッセージを送った。
みんな、夢はあるかい?
1%の可能性があれば、必ずできる。
今日からトレーニングを始めて、
もう一回、プロ野球選手になろうと思います。
みんなも、なにか挑戦しようぜ!
いきなりのプロ野球現役復帰宣言、そのきっかけはインスタだった。
1カ月前の10月、なにか始めたいと思ったぼくは、インスタをやりはじめた。
ぼくはSNSのことは、ほとんどわからない。でも、こういうものが流行っていると知って興味を持った。
それから現地の知人に教えてもらいながら、バリ島での日常を投稿するようになった。
インスタにハマるまで、ほとんど時間はかからなかった。日に日に投稿の数が増えていく。勢いがついてしまったのは、思っていた以上の反響があったからだ。
ぼくはかつてプロ野球選手だった。でも、それは2006年までのこと。
引退してからは、プロ野球界とほとんど関わっていない。
監督やコーチはやっていないし、解説もしていない。
新しい人が次々と出てくるこの世界では、もうすでに過去の人だ。
しかも2010年からバリ島で暮らしはじめて、人前に出るような仕事はほとんどしていない。
だからファンのみんなは、ぼくのことなんかすっかり忘れていると思っていた。
ところがインスタを始めた途端、すごい勢いでフォロワーが増えていき、たくさんのコメントが届きはじめた。
なんだこりゃ!? 最初はびっくりして、呆然とした。
でもコメントを読むうちに、胸がいっぱいになっていった。
「こんなにたくさんの人が、ぼくのことをおぼえてくれていたんだ……」
何気なく始めたインスタで、こんな気持ちになるとは思ってもみなかった。
バリで練習に励む新庄さん。そのグローブには「インスタフォロワーと戦う!!」と刺しゅうされている 【写真:京介】
インスタのフォロワーのみんなは、そう言ってぼくのことをうらやましがってくれる。
それはぼくが思いついたことをすべて、しかもすぐに実行しているからだと思う。
思い立ったら、すぐにやる。
思いついたことを、すべてやる。
そう、ぼくは自分の気持ちに素直に生きているんだ。
「答えより もっと大事なことは 勇気出して 自分を試すことだ」
これは小学生のころ夢中になった、野球アニメ『キャプテン』の主題歌の一部だ。
この歌詞に、ぼくは一発でノックアウトされた。
そうだ! そうなんだよ! ぼくは大空に向かって叫びたくなった。
自分の秘めた力なんて、自分でもわかるわけないよ!
それなら結果なんて気にせず、勇気を出して自分を試そうじゃないか!
心の底から、そう思ったんだ。
この歌は、さまざまな場面でぼくを支えてくれた。もちろんメジャーに挑戦したときも。
「みんなは、おまえなんかが通用するわけがない、と言う。でも、そんなの誰にもわからないじゃないか。勇気を出して自分を試さなきゃ始まらないじゃないか!」
そう思って、アメリカに乗り込んだんだ。
現役復帰宣言をしたいまも、もちろん心の中で鳴り響いている。
ぼくの行動は、本当にこの歌詞そのままなんだ。
ぼくはいままで、誰もやっていないことにたくさん挑戦して、何度も成功させてきた。
阪神時代の「敬遠球のサヨナラヒット」も、そのひとつ。
なにかにチャレンジするとき、ぼくはいつも周到に計画を進める。
あのときもそうだった。ある試合で敬遠のシーンを見たぼくは、「これ、打てるんじゃないか」と思い、敬遠球を打つ練習をするようになった。それが甲子園での巨人戦で実を結んだわけだ。