大谷翔平が投じた30球は大きな意味を持つ こんなとき例えばイチローだったら…
登板翌日のスタメン起用は「指揮官の配慮」
大谷の復帰登板はわずか30球で終了と、二刀流復活は厳しいスタートとなった。この先、ピンチをチャンスに変えられるか 【Getty Images】
夕食の買い出しのためだが、知っている店が軒並み閉まっており、空いている店を探すのに苦労した。なにより驚いたのが一変した街の景色。市内を走る名物のケーブルカーは運行を停止したまま。まだ夜9時というのにまるで人気がない。ホテルでも他の宿泊客と会ったのは一度だけ。エレベーターで誰かと乗り合わせることもなかった。
観光シーズンのピークのはずだが、まるで観光客を見かけず、サンフランシスコはコロナ禍でじっと息を潜めているかのようだった。
マット・チャップマン(アスレチックス)が先日、「無観客は、俺たちに有利に働く。だって、いつもガラガラの中で試合をしているから」と自虐的に話していたが、スタンドの雰囲気は、ほぼ普段通りだった。
大谷の登板から一夜明けた27日(現地時間、以下同)午前、そんな人気のない球場のスタンドからフィールドを眺めていると、大谷が「3番・指名打者」でスタメンに名を連ねた、というニュースが記者席を駆け巡る。確かに前日、ジョー・マドン監督は含みを持たせたが、エンゼルスは基本的に先発翌日は休養という方針をこれまで貫いており、例外はなかった。ところが、マドン監督がいきなりその禁を破り、ざわめいたのだ。
試合前の会見でマドン監督は、「(前日の)帰りのバスで伝えた」と明かしたが、先発したとはいえ、わずか30球。疲労はない、との判断があったよう。だがそれ以上に、こんな配慮があった。
「自分にプレッシャーをかけすぎているようなので、少しそれを取り除こうと」
気分転換的な意味合いもあったのだ。次の日の試合に出るなら、否が応でも気持ちを切り替えなければならない。ただ、その試合で3三振。10回バットを振っただけで、出塁もなし。疲労がたまることはなかったが、むしろ考え込む要素が増えたのは、皮肉だった。
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