逆境をはねのけて達成したZOZO優勝 コメントから振り返るタイガーの偉業

北村収

昨年のタイガー・ウッズの優勝は、数々の逆境をはねのけて達成されたものだった 【Getty Images】

 左膝手術の後の初試合、初日の3連続ボギースタート、記録的な大雨、無観客試合、1日29ホールプレー、そして月曜日早朝フィニッシュなど、昨年のタイガー・ウッズの優勝は、数々の逆境をはねのけて達成されたものだった。この厳しい状況をタイガーはどのように対応していったのだろうか?

左膝手術後の初試合に心配の声

 昨年4月にマスターズで優勝。同月の24日(日本時間25日)、自身のツイッターで10月に日本で初開催される「ZOZOチャンピオンシップ」出場を発表すると日本のファンは熱狂した。タイガーの日本でのトーナメント出場は13年ぶり。しかもメジャーチャンピオンとして復活したタイガーには、優勝争いへの期待が高まった。

 ところが開幕が近づくにつれて、有力な優勝候補としての見方は徐々に薄まっていった。7月の「全英オープン」ではカットラインに遠く及ばず予選落ち。腰痛が再発し、「もう若くはない」という弱気なコメントも発せられた。その1カ月後に出場した「ザ・ノーザントラスト」では、第2ラウンドのスタート前に脇腹の痛みを理由に棄権。翌週の「BMW選手権」では37位タイで4日間完走したが、その直後に左膝の手術を行ったと自身のツイッターで発表した。

 本人は「10月の日本でのプレーは楽しみ」とコメントしたが、手術から約2カ月後に開催される「ZOZOチャンピオンシップ」に関しては、出場すら危ぶまれるのではというネガディブな報道も続出した。

初日第1打の池ポチャ、3連続ボギーからの巻き返し

初日から大ギャラリーがタイガー・ウッズのプレーを見守った 【Getty Images】

 13年ぶりとなる日本での試合となったタイガー。大ギャラリーが期待した初日の第1打目はなんと池ポチャだった。このスタートホールをなんとかボギーに納めたが、「次から次へと悪いショットが続いた」と2ホール目、3ホール目もボギー。まさかの3連続ボギースタートに、左膝手術後初試合に対する開催前にささやかれていたネガティブな予想が現実化してきたと思われた。

 ところが、だった。5ホール目からの3連続バーディでスコアをイーブンパーに戻すと9ホール目でもバーディ。前半のうちにスコアをアンダーパーにしリーダーボードでも上位につけた。

 後半の9ホールは全盛期のタイガーチャージを彷彿(ほうふつ)させる好プレーだった。「パットのフィーリングが良かった」と次々とパットを沈めバーディラッシュ。6アンダーまでスコアを伸ばし、初日をトップタイで終えた。

 3連続ボギースタートから巻き返しについては、「あの悪い出だしから6アンダーまで伸ばせるとは思っていなかった」と本人も驚いた様子。「風が強かったので他の選手たちは2〜3アンダーでラウンドするだろうと思いアンダーパーで終われればと思っていたが、うまく波に乗りパットを決めていくことができた」と焦らずに立て直しを図った結果が初日の躍進につながった。心配されていた左膝に関しては、「今日はうまく回転もできていたし、何よりもしゃがんでラインを読むことができるようになって良かった」と振り返った。

慣れない無観客試合でも動じず、スコアを伸ばす

第2ラウンドは無観客での開催となった 【Getty Images】

 大会2日目は大雨のため順延。第2ラウンドは大会3日目となる土曜日に開催された。「今日プレーができるようになっているなんて驚いたよ」とタイガーが話したくらいの記録的な大雨が前日に降ったが、夜明け前からコーススタッフによる懸命の作業により、10時にトップの組がスタートした。ただ、コース内に多数の水没箇所が発生しており、ギャラリーの安全を確保するのが難しい状況のため大会3日目は無観客試合となった。「ゴーストタウンのように静かだった。パットが決まった時に、カッツポーズをしたくなるけど、今日は歓声がないからする必要がなかったね」と冷静に振り返っていた。

 この冷静さはプレーでも生かされていた。「風が強かった」フロントナインを2バーディ、1ボギーで折り返すと、バッグナインで5バーディ、ノーボギー。「アイアンの調子はいい。いつもピンの手前につけられたし、グリーンのスピードも良かった」と振り返ったタイガーは、12アンダーで単独トップに立った。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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