連載:闘魂60周年記念、アントニオ猪木が語る3つのターニングポイント

77歳の猪木が目指す“理想郷”とは? 誰もやらないことに挑戦する闘魂は健在

茂田浩司

77歳になった猪木を突き動かす思いとは

今でも猪木を突き動かすのは「俺しかいねえじゃねえか!」という不屈の闘志だ 【撮影:菊田義久】

――猪木さんは、プロレス・格闘技界に「猪木の後継者」を育てるおつもりはないですか。

 フフフ……(苦笑)。

――猪木さんが持っていらっしゃるもの、猪木さんにしか伝えられない感覚、感性があるのではないかと思うのですが。

 俺には「基本」というのがないんですよね。たとえば、アマレスをやっていれば「相手の懐に入って、後ろに回って、足を持って倒す」。そういう基本を教わったことがない。全部が自分の勘の動きです。

――それで「唯一無二のアントニオ猪木」が生まれたわけですね。

 だから、人に教えるといっても、教えようがない。俺の勘だから。だから、よく空手道場でも柔道でも指導者がいますけど、俺は指導ができないんですよ。タックルはこうなんだよ、あるいはこうだ、とか。

 俺から見ると、素質とか体とか、すごくいいのが何人かいたんだけど「なんで、こんなできないのかな?」って選手もいましたね。

――それは「名選手、名監督ならず」で、何でもできてしまう優秀な人が指導者になると、選手を見て「なぜこんなに簡単なことができない?」となる、ということなのでしょうか。

 それともちょっと違う。名選手でも基本はあると思うんだけど、俺は全く基本というものがないから。人生でも基本がないから「こうやって不動産を買って、こうやってお金をもらって」なんて発想は全くない。

 簡単に言えば、世の中がこんなんだから挑戦できるじゃねえか。もっと言えば「俺しかいねえじゃねえか!」っていう思いもあって。

 ま、評価されるかされないかは関係ないし。悪口を言うヤツもいるだろうし。悪口を言うなら、もっとカッコよく言ってこい、ってね(ニヤリ)。

――カッコいいです。しびれました。今日は貴重なお話をありがとうございました。

(了)

(企画構成:有限会社ライトハウス)

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