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ルヴァン決勝PK戦、キッカーとGKの心境は
“外せた感覚”の進藤と“ゾーン”の新井

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後編

進藤は蹴る直前に一度止まって、新井はピッチに両手をついた。進藤自身「(タイミングを)外せた感覚はあった」と語った
進藤は蹴る直前に一度止まって、新井はピッチに両手をついた。進藤自身「(タイミングを)外せた感覚はあった」と語った【(C)J.LEAGUE】

 埼玉スタジアム2002で開催された2019年のJリーグYBCルヴァンカップ決勝、川崎フロンターレ対北海道コンサドーレ札幌は、開始10分に菅大輝の鮮やかなボレーシュートで札幌が先制。しかし前半アディショナルタイムにコーナーキックの流れから阿部浩之(現名古屋グランパス)が押しこみ、川崎が同点に追いついてハーフタイムを迎えた。進藤亮佑は失点につながったコーナーキックの場面で相手と競り合って倒され、そのプレーがファウルでなかったことに憤慨し、「前半終了の笛が鳴って5秒後にはピッチを出ていた。怒りを静めるのに必死だった」


 後半も劇的な展開が続く。一進一退の攻防が繰り広げられる中、88分に途中出場の小林悠が相手の一瞬の隙を突く、裏への飛び出しから2−1の逆転ゴールを記録。札幌も負けじと90+5分に深井一希のヘッドで2−2の同点に追いつき、両チームサポーターの歓声と怒声に包まれた中で90分を終え延長戦に突入した。「僕らの雰囲気になっていた。実際にそうじゃなかったとしても、僕らはそう感じていたし、それまでの疲れを吹き飛ばすようなゴールだった」(進藤)。敗色濃厚の後半アディショナルタイムでの同点弾は、チームに勢いを与えた。

川崎が数的不利になり逆転を許す

 延長前半3分、札幌のチャナティップがドリブルでペナルティーエリアへの進入を試みると、谷口彰悟が横から体を入れてブロック。VARの結果、谷口は退場となり、札幌は絶好の位置でフリーキックを獲得した。キッカーは福森晃斗。川崎のGK新井章太もともにプレーした元川崎の、リーグ屈指のプレースキッカーだ。


「谷口がいなくなるのは本当にキツかった。ボールを奪うところでもそうだし、高さの面でも痛かった。フリーキックでは本来壁に入る予定がなかった長谷川(竜也)が入って、(大島)僚太と並んでいたところを狙われた」(新井)


 ゴール中央やや右寄りのところから、福森はファーサイド、左側に蹴りこんだ。左足で巻いたボールは164センチの長谷川と168センチの大島の間をすり抜けゴール左上に吸いこまれた。「狙われやすいことはわかっていたし、福森のキックもわかっていただけに悔しさが残る失点だった」


 後半追加タイムの同点ゴールで上昇気流に乗った札幌は数的有利に加えて、値千金の逆転弾によってタイトルに大きく近づいた。しかし、進藤は気を緩めなかった。「あの時点で勝利が頭をよぎったけど、相手が1人少ない状況って有利ではあるものの、難しさもあると思っていた。2014年の(ブラジル)ワールドカップで日本代表が数的有利な状況だったのに、勝てなかった試合があって(ギリシャ戦、0−0)、簡単な状況とは思えなかった」

盟友小林悠との恒例の“儀式”

新井と苦楽をともに味わってきた小林。決勝では2ゴールの活躍でチームを救った
新井と苦楽をともに味わってきた小林。決勝では2ゴールの活躍でチームを救った【金田慎平】

 延長後半109分、川崎の左からのコーナーキック。ファーサイドに飛んだボールを味方が折り返し、ゴール前の小林悠が合わせて川崎が再び3−3の同点に追いつく。


 2019シーズン前半、小林はなかなか点が取れず、ある試合の前に自身に喝を入れるため「章太、一発(背中を)たたいてよ」と新井に頼んだ。その日、小林は前半早い時間帯にゴールをマーク。以来、「まあまあ思いっきり、たまに『うっ』ってなるくらい」力強く背中をたたくことが、試合前の恒例の“儀式”となり、ルヴァンカップ決勝の前も気合を注入した。


 両者は苦楽をともに味わってきた。新井は小林についてこう話す。「年齢は1つ上だけど『悠』って呼んでいるくらい仲がいい。何でも話せる仲で、プライベートも含めて何をするにも一緒だった。あいつがキャプテンとしていろいろなものを背負っている中で、自分がみんなに声をかけてサポートしたり、チーム内でもすごくいい関係だった」。その小林が後半に勝ち越しゴールを、終盤に同点ゴールを決めてチームを救った。「あの苦しい状況でゴールを決めてくれて本当に助かったし、うれしかった」


 試合は3−3のまま120分の戦いを終え、PK戦へと進んだ。進藤は6人目を“志願”した。「1、2、3番くらいまではすんなり決まって、その後がすぐに決まらなくて。僕は4番目よりも試合を決めるつもりで6番目に蹴ると」。5人目でなく6人目を選んだのには理由がある。育成年代も含めて進藤は今までPK戦で蹴ったことがなかった。いつも立候補しながらだいたい7人目で待機し、その前の6人目で決着がつくことが多かった。「足をつっていた選手もいて、自分は蹴られる状態だったので手を挙げた。蹴りたくないと思いながら回ってくるよりも、俺が試合を終わらせるというポジティブな気持ちで臨みたかった」。そして実際に出番が回ってきた。

安田勇斗(サッカーキング編集部)

スポナビDo

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