連載:岡田メソッドの神髄

岡田メソッドはいかにして生まれたか バルサではなく、常識を覆すペップに刺激

飯尾篤史

まだイノベーションを起こす余地はある

グアルディオラ監督(右)は常識を覆す発想で戦術を追求し、サッカーを進化させている 【写真:ロイター/アフロ】

――いったん白紙に戻したとはいえ、その後もジョアン・ビラさんや息子のフェランさんからアドバイスを受けているということは、やはり、プレーモデルはバルサの影響が強いわけですよね?

 どうだろうな、バルサなのか……。例えば、吉武はバルサのサッカーをほとんど見たことがなかったんだよ。

――え!? アンダーの日本代表監督時代、「アジアのバルサ」と称賛されるサッカーを展開していたじゃないですか。

 俺が「吉武のサッカーって、バルセロナに似てるやん」と言ったら、「え、そうなんですか?」って(笑)。俺はバルセロナを意識してる部分があったけど、他の人たちは意外と意識してなかったかもしれないな。いや、俺もバルサというより、(ジョゼップ・)グアルディオラ(現マンチェスター・シティ監督、元バルセロナ監督)なんだな、意識していたのは。パスをつなぐサッカーというより、常識を覆すような発想の方。

 俺はずっと、「サッカーは成熟したスポーツだ」と言ってきた。成長曲線には必ずプラトー(成長が停滞する時期)が来るもの。サッカーにおいても「トータルフットボール」とか、「プレッシング」とか、劇的な戦術が生まれてきたけど、最近は、より速く、より強く、より正確に、というように、イノベーションではなく内に向かっている。でも、それは当然のこと。サッカーはすでに成熟したスポーツだから。

 この先はスピードやパワーの勝負になるから、日本人にとっては難しくなるだろうなと思っていたら、グアルディオラが出てきた。グアルディオラのサッカーを見たとき、「まだまだイノベーションを起こす余地があるんじゃないか」と思った。グアルディオラのチームでは、サイドバックが中央でプレーすることがある。じゃあ、そもそもサイドバックはなぜ、サイドにいなきゃいけないの? そんな決まり事はないわけ。サイドバックと呼ぶから、サイドにいなきゃいけないと思い込んでいるだけで。

――常識を疑い、発想を変えるわけですね。

 キーパーだって、なぜ、ゴール前にいつもいるの? 点を失わなければ、サイドに出て行ってもいいじゃないかと。そうやって発想を変えると、サッカーにはまだまだイノベーションを起こす余地があることに気がついた。

――(リオネル・)メッシをセンターフォワードで起用したり。

 昔の発想なら、メッシはトップ下なんだ。でも、右ウイングで使ったり、センターフォワードで使ったりした。常識を覆すようなサッカーをしているグアルディオラに、俺はすごく刺激を受けた。もっといろんなことができるんじゃないかと思ったわけ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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