武藤敬司が磨き上げたオリジナリティ 日本では米国流を、米国では日本流を
第3回
アメリカでは日本で培ったものを、日本ではアメリカのレシピを生かして個性を作り上げ、唯一無二のプロレスラーとして日米マットで存在感を発揮する武藤 【Photo by Etsuo Hara/Getty Images】
試合の勝敗はもちろん大事だけど、それはたとえば落語の「さげ」くらいに考えていいんじゃないかな。「さげ」がないと噺(はなし)が終わらない。そしてまた別の日には別の噺が始まっていく。プロレスのカウント1・2・3もそれと同じようなもの。
だからこそ、自分の商売道具でもある個性を磨いていくことは大事になってくる。自分だけの型が決まっていけば、レスラーは長期間活躍することができる。
俺の場合、アメリカでは日本で培ったものを、反対に日本ではアメリカのレシピを生かして個性を作り上げていった。
人のできないことをやるのが鉄則
力を生かして試合を進めていく。きめの細かいレスリングなんてできない。
俺は新日本プロレスの道場で鍛え上げたレスリングのテクニックがあったから、それがすごく役に立った。細かな関節技とか彼らは知らない。俺は柔道の頃から絞め技の稽古も嫌いじゃなかったし、新日本のサブミッションも会得してた。なおかつ、それをより大胆に、より大きくアピールすることもできた。つまり選手同士にしか分からない寝技の腕試しじゃなくて、観客に分かるようにグラウンド技を伝えることができた。アメリカのレスラーからジムでの筋力アップのトレーニング法を教えてもらう代わりに、俺がグラウンドのテクニックを教えてあげたこともあった。
当時の俺の身長は188センチ。日本では大きい方だけど、むこうではまあまあぐらいで、小さくないぐらいのサイズ感。
でも、それぐらいの身長のある人間でムーンサルトを打てる奴なんてアメリカにいなかったから驚かれた。ムーンサルトはむこうで大受けだった。
アメリカであの技をポピュラーにしたのは、おそらく俺なんじゃないかな。
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