京都で昇格して、もう一度J1へ 中川風希が静かなる闘志を燃やす
昨季の中川は3月に横浜FMに移籍するまで、琉球でJ2の3試合に出場して4アシスト。ゴールに直結する働きができるのが強みだ 【(C)J.LEAGUE】
自分の実力を客観視して
そう笑みを浮かべながら話すのは、今年から京都サンガF.C.に加わった中川風希だ。彼は昨年に横浜F・マリノスでJ1優勝を、一昨年にはFC琉球でJ3優勝を経験している。京都でJ2優勝を成し遂げれば、Jリーグのリーグ戦タイトルをコンプリートすることになる。
好選手であることは間違いないが、疑問があった。なぜ彼は京都へ移籍してきたのか。
たしかに横浜FMでの出番は限られていた。魅力的なサッカーを繰り広げるチャンピオンクラブで、中川が公式戦のピッチに立ったのは6試合のみ。リーグ戦での先発出場はなかった。しかし1年目の経験をベースとして、開幕後の3月に加入した昨年と違って今年はキャンプから参加できる。しかも今季の横浜FMはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に参戦するだけに、選手にとっては試合でプレーするチャンスが増える。
中川は横浜FMでの日々について、「試合に出るのは難しかったけれど、すべてがプラスでした。『これがJ1なんだ』と感じられたし、いろいろなものを吸収できた」と振り返る。同時に、否が応でも実感させられたことがあったという。
「自分はまだJ1じゃ無理なんだ」
実力不足。弱点だと自覚するフィジカル面はもちろん、判断力を含めたプレーのスピードを上げる必要性をひしひしと感じたのだ。
スペイン5部や4部リーグからJ3、そして昨季J2で3試合を戦った段階で訪れたJ1での挑戦を通じて、中川は自身の現在地をしっかりと受け止めて、シーズンオフの決断につなげている。在籍2年目に定位置をつかんで、日本代表にまで上り詰めた同い年の畠中槙之輔のような例もあるだけに、2年目の飛躍を目指して横浜FMに残留する選択肢もあったが、自分の実力を客観的に見てJ2でプレーする道を選んだ。
決してネガティブな判断ではない。「切り替えられました。ここでがんばって、成長して、もう一度J1へ行きたいですね」という言葉は強がりではなく、現在の彼の本音だろう。
得点に絡み、そこでアイデアを出す
中川はまさにそういうタイプで、相手が警戒するバイタルエリアでボールを受けてチャンスを作ったり、フィニッシュに絡めるのは魅力だ。2018年には、J3で32試合に出場して16得点をたたき出している。本人も「最後の局面は、琉球でもマリノスでもこだわってきました。得点に絡む。そこで自分のアイデアを出していきたい」と話す。
今年からチームを指揮する實好礼忠監督は、「クレバーなプレーができて、いろんなところが見えているし、感じられる。課題としては強度のところ。あとは(周囲と)関わる回数と質。そこは本人にも話しています。いいものを持っている一方で、ベーシックな部分で足りていないところもある」と評する。
選手や指導者としてガンバ大阪に長く在籍した實好監督は、中盤の名手と呼ばれる選手たちを間近で見てきた。その経験から、「いいアイデアがあっても、それを出せる状況を作らないといけない。僕が見てきた選手たちは、そこが優れていました。たくさんの選手との関係性を持つなかで、どうポジションをとるのか、どう動くのか。そこを突き詰めていけば、もっといろんな仕事ができますよ」と期待を込める。
チームを勝たせられる存在に
ピッチ外でも同じ新加入で同世代の荒木大吾や飯田貴敬や曽根田穣らと仲良くするなど、環境への適応は問題なさそうだ。となれば、ピッチ内での活躍に期待が膨らむ。
「去年はスタートからすごくバタバタして、試合にも絡めなかった。今年は試合に出て、京都でJ1に昇格したい。求められる役割に対応して、そこで点を取るためのポジショニングや動きを練習から取り組んでいます」
目指すのはチームを勝たせられる存在だ。中断期間が明ければ、J1昇格をかけた戦いが再び幕を開ける。静かなる闘志を燃やして、そのときを待つ。
(企画構成:YOJI-GEN)
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