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“らしさ”を取り戻した渡邉新太
やんちゃなストライカーが新潟をけん引
開幕戦で決勝ゴールを決めた渡邉(写真右)。中断期間も心身ともに良い状態を保っているようだ
開幕戦で決勝ゴールを決めた渡邉(写真右)。中断期間も心身ともに良い状態を保っているようだ【(C)J.LEAGUE】

 スペイン人指揮官を迎えた今季の初陣で、チーム第1号弾をマークしたのは、渡邉新太だった。右足ダイレクトで放った思いきりの良いシュートは“らしさ”あふれる一撃だった。プロ2年目に戦術に徹したことで周りを生かす術も覚えた。だが、それでも見せ場は「ゴール」ときっぱりと言う。その言葉には責任感と意欲に満ちている。

プロ3年目で勝ち取った初の開幕スタメン

“らしさ”全開の豪快なボレー弾で、均衡を破った。


 今季の開幕戦となったJ2第1節・ザスパクサツ群馬戦。0-0で迎えた82分、アルビレックス新潟は相手陣内でFKのチャンスを得た。相手DFにクリアされたボールは、予測して待ち受けていた渡邉新太のもとへと落ちていく。


「その前に(持ち直して)2、3回外していたのでトラップは考えず、ダイレクトで思い切り打った」


 ペナルティーエリア手前から、右足ダイレクトでゴールネットを揺らすと、アウェーに駆けつけた約6000人のサポーターは大歓喜。流れは一気に新潟へと傾く。ロメロ・フランクとファビオにも点が生まれ、チームは3-0の完封勝利でスタートを切った。


 プロ3年目で初の開幕スタメンを勝ち取り、チーム今季第1号弾かつ決勝弾を決めた渡邉は試合後、「FWは一番やりたいポジション。結果を残せてよかった」と笑顔を見せた。だが、ひとしきり喜んだあとは「FWは点を取らないと、どんどん代えられるポジション。結果が求められるので、コンスタントに取り続けないと」と自らを引き締めた。


 流通経済大を卒業後、2018年に新潟へ加入。ルーキーイヤーは4-4-2のFWや左右のサイドハーフで起用された。DFの間を強引に突破して抜け出す思い切りのよさ、こぼれ球に飛び込む泥臭さを発揮したやんちゃなストライカーはJ2で10得点を記録し、その年のチーム得点王にも輝いた。

消化不良に終わったプロ2年目

 だが19年は、5得点に半減。一方で、アシスト数は18年の「2」から「9」に増加した。これは、チームとして勝つ可能性を高めるため、決定力の高いレオナルド(現・浦和レッズ)が仕留めることから逆算された戦術の中で、“役割”に徹した証でもある。


 昨季の主戦場は4-2-3-1の右サイドハーフ。前線のブラジル人選手は攻撃に注力するため、守備のタスクが増えた。


「守備をサボれば攻撃にパワーを使えると思うけれど、チームのために、やらなければいけない。あいつらが走らない分、俺が止めているから問題ない」


 チームメートがJ2得点王を視野に入れ始めた9月初旬、2得点にとどまっていた自分に言い聞かせるように、葛藤がこぼれたこともあった。


 それ以降は、8月に川崎フロンターレから加入した舞行龍ジェームズの活躍で、チーム全体の守備が改善され、ボールを保持して攻撃に関わる時間も増えた。ホーム5連勝で終えるほどに盛り返しはしたが、チームが目標としていたJ1昇格には届かず10位に終わった。


「求められたことができたから、必然的にアシストが多くなった。プレーヤーとして幅は広がったけれど、自分らしさはあまり出せなかった。プレーオフ圏内にも入らず、情けない」


 個人としてもチームとしても、消化不良な1年に終わった。

注目してほしいところは「ゴール」

 新潟での3年目、アルベルト・プッチ・オルトネダ新監督のもとで、一からの競争が始まった。キャンプでいくつかのポジションを試された後、リーグ開幕戦に向けて託されたのは4-4-2のFWだった。


「攻撃のゾーンに入ったら、どんどん仕掛けろ」

「パスを考えずに、打っていけ」


 スペイン人指揮官から求められたのは、積極的にゴールへ向かう姿勢。練習から、“らしさ”あふれる思い切りのいいシュートが見られるようになった。目にはギラギラとした光が宿り、やんちゃなストライカーの顔が戻ってきた。


「でもさ、子どもじゃないから、なんでもかんでもは打たないよ。見極めはする。打てるところは打つけど、パスを出すところは出す。プロだから」


 これは、プロ2年目に“役割”に徹したからこそ、洗練された部分。開幕戦ではロメロ・フランクの得点をアシスト。相手のクリアボールに冷静に反応し、「コースが見えた」とワンタッチで落としたラストパスは、チームの2点目につながった。


 この中断期間、「試合があってもなくても、中断していても、モチベーションは一緒。コンディションは習慣。ケアも筋トレも、いつもどおり」と、心身ともにいい状態を維持している。週1回ペースで行われている練習試合は非公開のため、詳細を聞くことはできないが、無難にコメントをする口調にも自信と充実感が漂う。


「中断明けに注目してほしいところは?」と聞くと「ゴール」ときっぱり。「FWだから、点を決めて貢献するのが一番。それが自分の仕事」。そう語る表情は明るい。


「目標はまず、2桁得点。ゴールを決めたら、チームも良くなる。ゴールでチームを引っ張りたい。いろんなパターンで決めたいね。今年はゴールの近くでプレーできるから、もっとレベルアップしないと」


 今はストライカーとしての責任感と意欲、何よりそこでプレーできる喜びに満ちあふれて、再開を待ち望む。


(企画構成:YOJI-GEN)

野本桂子

新潟県新潟市生まれ。大学卒業後、地元の広告代理店、タウン情報誌出版社に勤務。退社した2011年から、フリーランスの編集者・ライターとして活動を開始。古巣が出版していたアルビレックス新潟のファンマガジンのライターとして、定期的に練習場へ足を運ぶようになる。16年から、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の新潟担当記者、サポーターズマガジン『ラランジャ・アズール』(年10回発行)の企画・編集を務める。同年から新潟U-18の取材も続けている。20年3月19日に発行された是永大輔氏の著書『つぶやかずにはいられない。アルビレックス新潟社長戦記』(朝日新聞出版)の取材・構成を担当。

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