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尽きることのない情熱と向上心
札幌の主砲ジェイは今なお進化を続ける
札幌在籍4年目となるジェイ。ゴールを決めるだけでなく、周囲を生かす術も身につけたベテランFWが今季も攻撃陣を引っ張る
札幌在籍4年目となるジェイ。ゴールを決めるだけでなく、周囲を生かす術も身につけたベテランFWが今季も攻撃陣を引っ張る【写真は共同】

 チーム最年長で、今年5月には38歳になる。だがジェイは衰えるどころか、今なお進化を続けている。生粋のゴールハンターは傑出した得点力はそのままに、ポストワークやラストパスの質を高め、よりオールラウンドなストライカーへと変貌した。この年になっても変化を恐れないのは、サッカーへの情熱と「もっとうまくなりたい」という向上心を持ち続けているからだ。

今季も札幌を助け、相手の脅威であり続ける

 2月16日に行われたYBCルヴァンカップ第1節。今季の公式戦初戦となるサガン鳥栖との試合を敵地で戦った北海道コンサドーレ札幌だったが、立ち上がりからパスミスが目立ったり、相手のビルドアップをうまく封じ込めることができなかったりと、難しい展開を強いられていた。しかし、開始14分。福森晃斗が蹴った左CKを押し込んで先制点を奪う。今季の公式戦チーム第一号となるゴールは、元イングランド代表FWジェイのヘディングによってもたらされた。


「さすが」の一発だった。パワーやシュートの技術はもちろんだが、内容面では劣勢とも言える状況ながらも、そうした流れに関係なくスコアを動かせるその決定力の高さは圧倒的。まさに点取り屋。今季もこの男が要所で札幌を助け、常に相手チームの脅威であり続ける。そうした予感を初戦から抱かせた。鳥栖のみならず他のライバルチームにも、あらためてその勝負強さを示したと言えるだろう。


 今年の5月に38歳を迎えるジェイ。昨年夏に小野伸二がJ2のFC琉球に移籍してチーム最年長選手となり、その立場は「プロになってから初めての経験だよ」と言うが、「チームのためになにができるか。OBの方々などからもアドバイスをもらいながら、しっかりとした立ち振る舞いでチームに落ち着きを与えたい」と続ける。


 そうしてチームを引っ張る立場として、札幌在籍4年目となるこの2020年シーズンに突入した。おそらく熱心に札幌を注視しているファン、サポーターならばすでに感じ取っていることと思うが、札幌での戦いのなかで間違いなく彼は変化を続けている。

昨季途中あたりから言葉に変化が

 アーセナル(イングランド)のアカデミー出身で、コヴェントリー(イングランド)、ペルージャ(イタリア)、ブラックバーン(イングランド)などで活躍し、10年にはイングランド代表としてもプレーしているストライカーは、15年にムアントン・ユナイテッド(タイ)からジュビロ磐田に移籍。常にゴールの位置を確認しながらプレーをする生粋のゴールハンターは、Jリーグでもただちに結果を出した。札幌もこの選手には手を焼かされたものだ。そして17年シーズンの途中に札幌へ加入した。


 おそらく磐田時代もそうだったのだと思うが、札幌加入後の彼の言葉は一貫していた。どんな試合を前にしても、「自分の仕事は得点を取ること。それがFWの仕事だ」。そして実際に得点を重ね続けた。


 欧州のハイレベルな競争を生き抜いてきた、その得点力はダテではない。「得点を取るのが仕事。自分の仕事をしただけだ」と、さながらゴルゴ13のような雰囲気さえあった。とにかく点を取る。それでいいんだろ? と。


 だが、昨季途中あたりからその言葉に変化が表われた。チーム最年長になった時期と重なっていたかどうかは定かではないが、「現代サッカーでは、FWは得点を取るだけではだめ。チャンスメークも重要になる」と発するようになったのだ。そしてそれにとどまらず、「大事なのはチームの勝利。自分が得点できずとも、チームが勝てばそれでいい」とまで言った。少々おおげさだが、当初は「一体どうしたんだ?」くらいに感じた。なにしろ、あれだけ自身のゴールにこだわっていた選手である。


 その変化の理由に、ジェイはミシャことペトロヴィッチ監督との出会いを挙げる。「誰が得点を取っても、それはチームが取った得点だ」とミシャに説かれ続けたことで、「自分の意識が変わった」と明かす。

プレーの変化に加え性格も明るくなって

 果たして、意識が変わってからのジェイのパフォーマンスはものすごかった。とりわけ昨年夏場のパフォーマンスは傑出しており、クサビのパスを完璧にコントロールし、後方から走りこむ味方を意のままに操縦。ラストパスも正確。そして、自らも得点を奪い続けた。


 いまさらではあったが、欧州のトップストライカーは格が違う。そう痛感させられたものだ。今季のリーグ開幕戦では柏レイソルに2-4と大敗したが、そのなかでもジェイは相手の厳しいマークにあいながらもパスをピタリと止め、その後の展開につなげる高い技術を随所に披露。強風の影響でヘディングシュートがズレて無得点に終わったものの、その存在感は強烈だった。


 変わったのはプレーだけではない。「自分は性格的にも明るくなった」とジェイは言う。


「以前は味方がミスをすればイライラしたし、声を荒げたりもした。でも、ミシャに『君は経験のある選手なんだ。もっとサッカーを楽しんでプレーしたらどうだ?』とたしなめられてからは、あらためて自分と向き合うようになった」と説明する。


 文字にしてしまうのは簡単だが、欧州での経験を持つ37歳の選手が自らのスタンスを変えるのはそう容易なことではない。影響を与えたペトロヴィッチ監督もすごいし、受け入れる柔軟性を持ったジェイもプロフェッショナルだと言える。きっとサッカーに対するものすごい情熱があるからこそなのだろう。もっとうまくなりたい、と。


 まだまだジェイはレベルアップをするのだろう。


 5月には38歳となる。「8が自分のラッキーナンバーだ」と公言し、今季も背番号48のユニフォームをまとう。38歳となったジェイのプレーには、さらなるパワーがみなぎるはずだ。

斉藤宏則

1978年北海道生まれ。北海学園大学経済学部卒。札幌市を拠点に国内外を飛び回る。サッカーでは地元のコンサドーレ札幌、各年代日本代表を中心に、ワールドカップ、五輪、大陸選手権などの国際大会にも精力的に足を運ぶ

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