厚底シューズが選手の意識を変えた? 東京マラソンが示した、勝つための新基準
大きかった“MGC効果”
多くの選手が日本記録を上回るハイペースに果敢に挑んだ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
今回も、大迫と井上だけが入った先頭グループは、1キロ2分55〜56秒の設定で中間点通過は1時間1分58秒〜1時間2分1秒。一方、日本人選手が多く加わった第2グループは、ゴールタイム2時間5分台前半の計算となる2分58秒の設定で、高久や上門、2時間7分5秒を出した定方俊樹(MHPS)など、2時間7分台前半を出した選手たちは1時間2分21〜22秒で通過した。彼らを含め、これまでの日本記録ペースを元に設定された中間点の想定通過タイム、1時間2分57秒以内で実際に走った日本人選手は、途中棄権の4人を含めて31人もいたのだ。
東京マラソンが新基準になる
大迫(左端)ら、多くの選手がナイキの“厚底シューズ”でレースに臨んだ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
そうした中で言えるのは、ロードレースなどではこれまでの記録の基準が当てはまらなくなりつつあるということだ。「2時間6分台に入ったからには、さらに上のタイムはもちろんのこと、代表がかかったレースで勝ちたいというのはある」と話す上門も、「周りもすごいタイムが出ているので、そこまで価値のある6分台でもないからという思いもある」と話していた。それが選手たちの正直な実感だろう。
犬伏監督も「今は厚底シューズでやっている練習と、普通のシューズでやっている練習はタイムが違いすぎるので、練習日誌を別にしなければ整理ができない。今回も全体的な結果は良かったが、どのくらいのところが目安になるかというのはちょっとずつ……。あと1年くらいしたら見えてくるんじゃないのかなと思います」と言う。
ただ、選手たちにしてみれば、これからのマラソンは、多くの選手が中間点を1時間2分中盤以内で通過した今回のレース展開を基準にして考えなければいけない、ということを強く意識させられたのは事実だろう。
確かにこれはMGCファイナルチャレンジがあったからこその効果だが、今回の東京マラソンは好結果以上に、選手たちの意識を大きく変えるきっかけにもなるはずだ。