周東は東京五輪でも切り札となり得るか 走だけじゃない攻守兼備の侍へ殻を破れ!
侍ジャパンの戦い方を変える男・周東佑京(左)は東京五輪でも切り札となり得るか 【写真は共同】
侍ジャパンは昨年秋に行われたWBSCプレミア12で09年の第2回WBC以来、じつに10年ぶりとなる野球世界一の戴冠をようやく手にした。
迫りくる東京五輪に向けて景気づけとなったのは間違いない。しかし、稲葉監督はプレミア12とオリンピックはまったく別物だと考えている。
「一番の違いは、オリンピックでは人数が減ること。選手一人一人の役目も変わってきます」
プレミア12のロースター28名に対して、東京五輪は24名だ。この「マイナス4人」の差はかなり大きい。投手ならばワンポイントリリーフは使いづらくなるし、野手も守備固めに人数を割きたくないからスタメン選手にも一定以上の守備力が求められる。
それは走力も然りだ。
だが、プレミア12で輝きを放った代走・周東佑京(ソフトバンク)という武器。
この男がいるか、いないか。この足があるのか、ないのか。侍ジャパンの戦い方が大きく変わってくる。
プレミア12、周東の足が侍ジャパンを救った
昨秋のプレミア12での活躍に稲葉監督(左)も「周東を呼んでよかった」と口にしたという 【写真は共同】
1点を追う七回、先頭で吉田正尚(オリックス)が中前打を放った。ここでテレビ中継では実況アナウンサーが興奮した声でこう叫んだ。「さぁ、日本のジョーカー、切り札がここで投入されます」。周東がダグアウトを飛び出して一塁へ向かっていく。すると、何度もけん制球を投げられ警戒された中で、浅村栄斗(楽天)が三振に倒れた5球目に二盗を成功。次打者の松田宣浩(ソフトバンク)も三振で2アウトとなったが、続く源田壮亮(西武)の3球目に三盗を決めた。
野球の定石でいえば、この場面での三塁スチールはかなりのリスクを伴う選択だった。しかし、周東には自信があったのは勿論、裏付けもあった。
「源田さんなら内野安打があると思ったから(それでも本塁生還できる三塁へ)走りました」
1点ビハインド、2アウト三塁。運命の4球目、源田が選んだのはまさかのセーフティバントだった。日本中のファンが驚いた。それはランナーの周東も同じだった。しかし、野球人としての本能が体を自然と動かした。快足を飛ばして、最後は投手のタッチをかいくぐって同点のホームを陥れたのだ。
ここぞの場面、試合終盤のどうしても1点が欲しいところで「周東」の名前が場内にアナウンスされるだけで、スタジアムの雰囲気ががらりと変わる。
「周東を侍ジャパンに呼んでよかった」
昨季の周東の打撃成績は102試合で20安打、打率1割9分6厘。稲葉監督にとって勇気のいる代表招集だったが、大会を通じて存在感をどんどん発揮する姿を見て思わずこのように口にしたという。