超新星ハーランドと怪物エムバペの競演 チームをCLベスト8に導くのは?

ロベルト・ロッシ
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まったく異なる特徴を持つ2人のスーパータレント。ベスト8を懸けた戦いで、より輝きを放つのは? 【Getty Images】

 2019-20シーズンのUEFAチャンピオンズリーグがついに再開する。現地時間2月18日(火)に行われるボルシア・ドルトムント対パリ・サンジェルマン戦は、今世界で最も輝いている2人の若手ストライカーが競演するという点で、ラウンド16の中でも特に興味深いカードのひとつだ。

 今冬に移籍したドルトムントでセンセーショナルな活躍を見せているアーリング・ハーランド。そして、いまや“超ワールドクラス”の域に達したキリアン・エムバペ。2020年代の欧州サッカーを担うであろう2人のスーパータレントは、まったく異なる特徴を持つ。ベスト8進出を懸けた戦いで、より眩(まばゆ)い輝きを放つのは――。

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衝撃度は3年前のエムバペを上回る

この1月にドルトムントに加入したハーランドは、ここまでブンデスリーガの5試合に出場して8ゴール。ザルツブルクでのシーズン前半戦の活躍が“本物”であったことを早くも証明した 【Getty Images】

 アーリング・ハーランドは、2019-20シーズンの欧州サッカーを揺るがす文字通りの超新星だ。

 昨年5、6月のU-20ワールドカップで1試合に9得点を挙げて(ホンジュラス戦)一躍注目されたノルウェーの超逸材は、8月にレッドブル・ザルツブルグでトップチームに本格デビューすると、オーストリア・ブンデスリーガとチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージを合わせ、前半戦だけで20試合・24得点という大爆発。ヨーロッパ中のメガクラブから注目を集め、冬の移籍マーケットでも一躍主役に躍り出た。

 マンチェスター・ユナイテッドやユベントスが獲得に乗り出すなか、出場機会とキャリアデザインを優先してドルトムントへの移籍を決めると、そのデビュー戦で途中出場からハットトリックを決めて衝撃を与え、続く2試合でも2ゴールずつマーク。移籍後初めて無得点に終わった2月8日のレバークーゼン戦では、ゴールを決めなかったことがニュースになったほどだ。デビュー1年目の衝撃度は、ほかでもないキリアン・エムバペが3年前にモナコで見せたそれに匹敵する、というよりも上回るレベルに達している。

 身長194センチという大柄な体格にもかかわらず、その身のこなしはまったく重さを感じさせず、スピードとアジリティは十分以上のレベル。身のこなしとパワフルな突進は、同じ左利きということも含めて、かつてイタリア代表で活躍したクリスティアン・ヴィエリを彷彿(ほうふつ)させるものがある。

 最前線で基準点として機能する大型CFでありながら、ゴール前に常駐してDFを背負ってプレーするポストプレー専業ではなく、裏のスペースをアタックしたかと思えば、2ライン間に引いてポストプレーをこなし、味方のためにスペースを作る動きもこなすなど、ダイナミズムと戦術感覚を併せ持った現代的なプレースタイルを持つ。ヴィエリのようなエゴイスティックな強引さを垣間見せながらも、ロベルト・レバンドフスキやハリー・ケイン、そしてまだ若くダイナミックだった頃のズラタン・イブラヒモビッチのように、周囲と連携しながら決定機を作り出し、自らそこに絡んでいくコレクティブな姿勢をも備えた万能型の大型CFだと言えるだろう。

 特筆すべきは、その傑出したゴールセンスだ。例えば今回の対戦相手であるPSG(パリ・サンジェルマン)のマウロ・イカルディのように、攻撃の組み立てにはほとんど参加せず、ゴール前で決定機を待ち受けるフィニッシュ特化型のストライカーではないにもかかわらず、プレーの流れのなかでタイミング良くゴール前のスペースに入り込み、フィニッシュに絡んでゴールネットを揺らす。これは、19歳という年齢にもかかわらず、プレーの展開と敵味方の位置関係から「時間とスペース」を的確に読み取り、正しいタイミングで正しいスペースをアタックする術を知っているからだ。

 ゴール量産のもうひとつの秘密は、正確なシュートにある。パワフルな左足のインステップキックを備えており、遠い位置からもシュートコースが見えれば積極的にミドルシュートを撃って行く。さらにペナルティエリア内でのシュートもその多くが、インサイドキックによるコントロールショットだ。GKやDFの位置や動きを間接視野で捉えているのだろう。力任せに叩(たた)くのではなく、ゴールの枠内、しかもゴールが決まるコースにきっちりボールを送り込む意識を持っている。
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著者プロフィール

現在はチェゼーナの女子チーム(セリエB)を指揮するイタリア人監督。選手時代には、育成年代でのちの名将アリーゴ・サッキに師事。ヴェネツィアではアルベルト・ザッケローニ(元日本代表監督)の下でプレーし、引退後はラツィオやインテルなどでそのザッケローニのスタッフを務めた。その後はイタリア国内の下部リーグで監督を歴任。他国のサッカーにも造詣が深く、イタリア在住のジャーナリスト片野道郎氏とのコンビで、『ワールドサッカーダイジェスト』を中心にアナリストとしても活躍中だ。チェゼーナ生まれの57歳。

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