ユベントス、24年ぶりのCL制覇へ サッリ新監督がもたらした「変化と上積み」

片野道郎
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ここまで全公式戦を通じて無敗を誇るが、内容が伴っているかといえば疑問が残る。サッリのチームが真価を問われるのはこれからだ 【写真:ロイター/アフロ】

 新監督にマウリツィオ・サッリを招聘(しょうへい)した今季のユベントスは、開幕からここまで無敗をキープし、チャンピオンズリーグ(CL)では早々にノックアウトラウンド進出を決めた。その戦いぶりには物足りなさもあるが、少なくとも結果の上では順調そのものだ。クラブ首脳部がセリエA8連覇中のチームの監督交代に踏み切ったのは、悲願であるCL優勝を果たすため。重大なミッションを担った60歳の指揮官は、24年ぶりのビッグイヤー獲得へ、ユーベにどんな変化をもたらし、そして今後、チームをどう進化させていくのか。

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「魅せて勝つ」という要求には……

 今季のユベントスは、少なくとも数字上の「結果」は申し分ない。本稿執筆時点では公式戦17試合を戦って14勝3分け(セリエA11勝2分け、CL3勝1分け)。国内リーグとCLの双方で無敗を保っているのは、ヨーロッパの主要リーグを見回してもユベントスだけだ。

 にもかかわらず、「サッリのユベントス」が物足りなさを感じさせるのは、いったいなぜだろうか。

 想定できる理由はいくつかある。まず一つは、結果は出ているものの、その「勝ちっぷり」が圧倒的な強さを感じさせるものではないこと。それと関連して、毎試合メンバーが少なからず入れ替わるなど「試行錯誤」が続いている印象を与えること。そして何より、ユベントスのサッカーがわれわれの期待する「サッリのサッカー」ではないように見えること。いずれもデータ的なエビデンスがあるわけではないが、マスコミやサポーターの間では共通した「空気」となっていることも事実である。

 最初の「勝ちっぷり」については、数字の裏付けもないわけではない。ここまで挙げた14勝のうち約8割にあたる11勝が1点差勝ちであり、しかも終盤のゴールで勝利をつかんだ試合も少なくないのだ。

 CLのロコモティフ・モスクワとの2試合は、いずれも終盤に勝ちを決めるまで攻め切れずに苦しんだ。セリエAでも直近のアタランタ戦は結果こそ3-1だが、リードを許していた70分過ぎまでは完全に相手のペースだった。

 ただ、ユベントスは元々、2点差、3点差をつけて圧勝するようなチームでなかったのも事実。マルチェッロ・リッピやファビオ・カペッロが率いていた当時から、攻守のバランスを決して崩さずに手堅く戦い、しかし最後には個の力の優位で勝利をもぎ取るという、言ってみれば「負けにくさ」がこのクラブの伝統的な持ち味だった。昨シーズンまでチームを率いたマッシミリアーノ・アッレグリの戦い方も、基本的には変わらなかった。

 しかしクラブ首脳陣が、在任5シーズンでセリエA5連覇、CL決勝進出2回という結果を残したそのアッレグリを、昨季限りで解任するという決断を下した理由の一端が、結果至上主義でスペクタクル性に欠けるスタイルに、ある種の限界を感じたからだというのも確かだ。その後任にマウリツィオ・サッリを招聘したのも、組織的な秩序を備えたスペクタクルな攻撃サッカーで、ほかでもないユベントスをあと一歩のところまで追い詰めたナポリ時代の実績、そして、さまざまな困難に直面しながらヨーロッパリーグ優勝という結果を勝ち取ったチェルシーでの采配ぶりが評価されたからにほかならない。

 つまり、サッリには「内容と結果を両立させること」、日本的な言い方をすれば「魅せて勝つ」というミッションが要求されているわけだ。しかし、今季ここまでの戦いぶりは、まだその域に達していないように見える。
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著者プロフィール

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。2017年末の『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』(河出書房新社)に続き、この6月に新刊『モダンサッカーの教科書』(レナート・バルディとの共著/ソル・メディア)が発売。

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