国際大会で打てる者とそうでない者の差 アメリカ戦・勝負を分けたポイント

中島大輔

「ボールを受けちゃっている感じがする」

7回の好機でセンターに抜けそうな打球を放った近藤(写真手前)だが、当たりが弱くショートに捕球され、悔しがる 【写真は共同】

 菊池や坂本がスーパーラウンドでは対応できずに凡退を繰り返す一方、何とか四球を選んでいるのが近藤だ。アメリカ戦では7回2死二、三塁からセンターに抜けそうな当たりを放ったが、打球が弱く、守備シフトを敷いたショートが正面で捕球した。

「当たり的には先っぽでした。守備位置を見て、ある程度意識しながら入りました」

 対して前日のオーストラリア戦で1点を追いかける7回、2ストライクから低めのチェンジアップを拾ってセンター前に落とし、同点撃の口火を切った吉田正尚(オリックス)はアメリカ戦の4回と6回、走者のいる打席でいずれもレフトフライに倒れた。ともに2ストライクに追い込まれてからコンタクト重視に切り替えた分、押された打球に終わっている。金子コーチは近藤と吉田についてこう指摘した。

「3番、5番も状態が悪いとは言わないですけど、試合になったときにどうもボールを受けちゃっている感じがする。受けちゃっているなと自分で気付いたとき、ガムシャラに振ったのがバッターの見当違いのボールだったり、悪循環が選手の中に出ている気がします」

普段通りの打撃ができている浅村

 一方、普段通りの打撃をできているのが浅村だ。

 センターから逆方向に意識を置きながら、最短距離でバットを強く出していく。とりわけ6回の二塁打は浅村らしい豪快な一打だった。

 また8回、追い込まれてから放ったレフト前タイムリーについては、こう振り返っている。

「(追い込まれてコンパクトにという意識はあったか?)初球から変わっていないですね。松田(宣浩)さんが(センターフライで)ランナーを三塁に進めてくれて、非常にいい形で回してもらったので、楽な気持ちで打席に入ることができました。そういうのも、しっかりボールを見極められながら、リラックスしながら打席に立てた要因だと思います」

 浅村と鈴木は打席ごとにやるべきことを整理し、高い技術を発揮できている。対して、他の打者は国際大会の壁にぶち当たっているのが実情だ。金子コーチが指摘するように、一朝一夕に解決するのは難しい中、どうしていくべきか。稲葉篤紀監督はこう話した。

「打線の組み方ですね。メンバーは変えられないので、調子がいいとか悪いとか言っている場合ではない。調子も含めて、どうやってつながりを持っていくのか。もう1回私の中でやっていきたいと思います」

菊池が首の違和感で交代…メキシコ戦は正念場

試合後、菊池の首の違和感が判明。首脳陣は打順の変更を示唆した 【写真提供:WBSC】

 13日にはここまで全勝のメキシコと対戦する。アメリカ戦で菊池が首に違和感を覚えて途中交代し、出場できるかは微妙なところで、金子コーチは頭を悩ませた。

「キクが(首の)違和感で下がって、明日から2番をどうするかをこれから話します。(秋山翔吾が離脱した)1番だけの問題ではなくなってきました」

 好調の鈴木と浅村を最大限に生かすためにどんな打線を組み、得点を奪うか。国際試合で打てないという問題を抱える侍ジャパンにとって、スーパーラウンド第3戦のメキシコ戦は正念場になる。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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