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敗れてなお美しいオールブラックス
サッカー脳で愉しむラグビーW杯(10月26日)

日本代表が敗れてもW杯はまだ続く

前回大会は開催国ながらプール予選敗退。その雪辱を晴らすべく、イングランドのファンは気合十分。
前回大会は開催国ながらプール予選敗退。その雪辱を晴らすべく、イングランドのファンは気合十分。【宇都宮徹壱】

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会2019は23日目。トーナメントも準決勝となり、いよいよ「天上の戦い」に突入する。ベスト4に名乗りを挙げたのは、優勝3回のニュージーランド、同2回の南アフリカ、同1回のイングランド、そして初の決勝進出を目指すウェールズ。フロックを感じさせるチームはひとつもない。「ここに日本が入っていたら」と思う一方で「この顔ぶれなら仕方ないよね」と納得もする。ティア2(中堅国)が勢いやラッキーだけで勝ち上がれるほど、やはりラグビーW杯は甘くはない。


 この日は、横浜国際総合競技場にて17時より、ニュージーランドとイングランドのセミファイナルが行われることになっていた。しかしサッカーファン的には13時すぎに埼玉スタジアムで開催される、ルヴァンカップ決勝(北海道コンサドーレ札幌対川崎フロンターレ)のほうが、明らかに注目度が高かったはずだ。私自身、埼スタから横浜までのハシゴ取材を考えたが、移動に2時間近くかかるため断念。90分で試合が終わらない可能性もあったので、今年は「一生に一度だ!」のラグビーW杯に集中することにした。


 ところで準決勝を迎えるにあたり、取材者としていささか気になることがあった。それは「日本代表のベスト8敗退で、大会そのものへの注目度が下がったのではないか」という疑念である。南アフリカに敗れた翌日の月曜日、メディアは日本代表とW杯の話題で一色。まさに「感動をありがとう」状態であった。ところが翌日の即位礼正殿の儀により、世の中の空気は完全にリセットされ、水曜日以降はラグビーの話題がめっきり減少。まるで10月20日をもって、大会が終了してしまったかのような錯覚さえ覚える。


 ここで思い出されるのが、日本に勝利した南アフリカのラッシー・エラスムスHC(ヘッドコーチ)の会見でのコメントである。いわく「日本の国民の皆さんに申し上げたい。大会はまだ2週間あります。どうか開催国として誇りに思ってください」。ストレートに受け取るなら「今大会の日本の躍進を誇っていい」ということだろう。しかし同時に「あと2週間、開催国でいることへの誇りを忘れずに」というニュアンスも感じ取れる。開催国の誇りとは、代表チームが好成績を残すことだけではない。日本代表が大会から去った今だからこそ、われわれは誇りをもって今大会を盛り上げ、有終の美で終えることが求められている。

イングランドがW杯で唯一勝利していない相手

ビール片手で盛り上がる海外のラグビーファン。スタジアム近くのコンビニは即席のパブになっていた。
ビール片手で盛り上がる海外のラグビーファン。スタジアム近くのコンビニは即席のパブになっていた。【宇都宮徹壱】

 キックオフ90分前、メディアルームに到着。いつもは他会場の試合を伝えるテレビモニターが、この日はルヴァンカップ決勝の模様を映し出していた。試合は2−2で延長戦に突入。さらに両者共に1点ずつを加えるという、実にスリリングな展開である。サッカーとラグビーのハシゴをしなくて正解だったが、これでオールブラックス(ニュージーランド代表の愛称)がイングランドに順当勝ちしたら、自分は負け組なのだろうか──。「サッカー脳」の私は、ついそんなことを考えてしまう。


 今大会のニュージーランドとイングランドは、共に台風で中止となった1試合を除いて4戦全勝。準々決勝では、前者はアイルランドに、後者はオーストラリアにいずれも快勝している。最近の対戦は昨年11月のテストマッチで、オールブラックスが16−15の接戦を制した。通算戦績はニュージーランドの33勝1分け7敗で、W杯ではオールブラックスが3戦3勝。逆にイングランドにとっては、W杯で唯一勝利していない相手、それがニュージーランドなのである。


 試合前、オールブラックスのハカが始まる。重要な一戦の前に行われる「カパオパンゴ」は、アイルランド戦に続いて2試合連続。対するイングランドは、スタメンとベンチの23名全員がVの字に隊列を組んで迎え撃つ。相手へのプレッシャーなのか、それともビクトリー(勝利)のVという意味なのか。いずれにせよ、キックオフ直前の息をのむような両者の対峙(たいじ)は、その後の試合の伏線だったのかもしれない。前半2分、マヌー・ツイランギが最初のトライを決め、なんとイングランドが先制する。


 今大会のニュージーランドは、ここまでの4試合で相手に許したトライ数は、わずかに3。前半での被トライはゼロだった。それが試合開始からわずか1分36秒でトライを許すと誰が予想しただろうか(しかもニュージーランドにおけるW杯での被トライ最速記録)。前半25分には、サム・アンダーヒルがイングランド2本目のトライを決めたかに見えたが、これは「オブストラクション」という反則でノートライの判定。それでも40分には、ジョージ・フォードがペナルティーゴールを決めて、前半は10−0で終了する。

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)

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