ラグビーW杯2019特集

大一番を制した日本代表のアタック戦術
データで振り返るスコットランド戦

スコットランドを破り決勝トーナメント進出

トライランキング1位タイの松島幸太朗。躍動感あふれるプレーでチームに貢献している
トライランキング1位タイの松島幸太朗。躍動感あふれるプレーでチームに貢献している【Photo by Yuka SHIGA】

 6万7666人のファンが見守る中、桜の戦士たちが新たな歴史を刻んだ。


 10月13日、ラグビー日本代表(世界ランキング8位/対戦時)は予選プールの最終戦で、前回大会で唯一敗れた宿敵のスコットランド代表(同9位)に28対21で勝利し、プールA全勝でベスト8進出を決めた。


 2戦目で世界ランキング2位(対戦時)のアイルランド代表を倒したことは奇跡ではなく、実力であることを証明してみせた。日本代表がスコットランド代表に勝利したのは1989年以来2度目(10敗)だが、互いにテストマッチと認める試合では初めてのことだった。


 それでは日本代表にとって会心の勝利だった試合をデータ(STATS、共同通信デジタル提供)で振り返ってみたい。

蹴らずにボールを継続した日本代表

SO田村優(右)とCTB中村亮土(中央)、WTB松島が戦い方を確認する
SO田村優(右)とCTB中村亮土(中央)、WTB松島が戦い方を確認する【Photo by Yuka SHIGA】

 まず、この試合に臨むにあたり、勝ち点としては3連勝の日本代表が14点、2勝1敗のスコットランド代表は10点と日本代表がリードしていた。日本代表は引き分け以上、負けてもボーナスポイント次第で決勝トーナメント進出ができるという有利な立場にいた。


 そのため、4トライ以上を挙げて勝ち点5を得たいスコットランド代表が攻勢に出てくることは十分に予想できた。日本代表は世界的なFBスチュアート・ホッグやスピードのあるWTBダーシー・グレアムのカウンターを警戒し、コンテスト(相手と競る)キックは蹴らず、前半の20分はボールキープし、積極的に攻める戦略で臨んだというわけだ。


 そのため、日本代表の前半のテリトリー(地域獲得率)は75%、ボール支配率は74%だった。相手に先制トライを許すものの、ラインアウトからボールを継続し、18分にWTB福岡堅樹が左サイドを抜け出し、WTB松島幸太朗にオフロードパスを通して、そのままトライ。26分には再びボールを継続し、最後はオフロードパスを3つつないでPR稲垣啓太が中央にトライを挙げて14対7でリードした。狙い通りのアタックだった。


 前半30分を過ぎると、SO田村優がスペースにキックを蹴り始めた。すると前半39分、キックカウンターから展開しCTBラファエレ ティモシーが利き足とは反対の右足でグラバー(転がす)キック、そのボールをWTB福岡がキャッチしそのまま快足を飛ばしてトライ。21対7と最高の形で前半を折り返した。

福岡のトライでリードを広げる

WTB福岡堅樹がトライを奪い、スタジアムは熱狂した
WTB福岡堅樹がトライを奪い、スタジアムは熱狂した【Photo by Yuka SHIGA】

 後半2分、WTB福岡が相手のボールを奪って、そのまま50メートルを走り切ってトライを挙げて28対7とした。日本代表は4トライ以上のボーナスポイントを得る一方で、スコットランド代表はここから3トライ以上を挙げて29点以上を積み上げなければ予選プール敗退が決まるため、スコットランド代表もボールキープしてアタックする戦略へとシフトした。


 いずれにせよ、後半5分までに21点差をつけたことは相手にとっては大きな、大きなプレッシャーになったことは間違いない。


 自陣からでも積極的にボールを動かすスコットランド代表が後半9分と15分に連続トライを挙げて28対21と7点差に迫る。その後は試合が動かず、日本代表がディフェンスで粘りを見せて勝利した。


 日本代表は後半こそ、少しキックをまじえて攻めたが、試合が終わってみればボールポゼッションは53%、テリトリーが58%、さらにボールインプレー(ボールが動いている時間)が40分を超えた。それだけ代表が意図通りのプランでアタックしていたことがわかる。


 結局、日本代表がボールを持って走った距離は927メートルで、スコットランドの633メートルの1.5倍で、パスも203回で相手の164回よりも40回ほど多かった。ラックの回数も122回(相手は89回)と多く、その65%の接点で3秒以内にボールが展開されている。日本代表のアタックが有効だった証である。

斉藤健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。 学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「世界最強のゴールキーパー論」(出版芸術社)、「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)など著書多数。最新刊は「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版/2017年11月刊)。

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