大一番を制した日本代表のアタック戦術 データで振り返るスコットランド戦

斉藤健仁

攻守に活躍したCTBラファエレ

攻守に高いレベルでプレーし続けるCTBラファエレ ティモシー 【Photo by Yuka SHIGA】

 ボールキャリアが走った距離は、1位タイが128メートルのWTB福岡とCTBラファエレ、3位はWTB松島の109メートルとなった。またボールキャリーの数はHO堀江翔太が13回、CTBラファエレが12回。ラファエレはタックル回数でもチーム3番目の15回で、この試合で目立った活躍をしていたことがわかる。

 またキックの回数は31本蹴ったサモア代表戦の1/3となり10回(266メートル)、スコットランド代表は22回(546メートル)も蹴った。相手のキック戦術がさほど有効ではなかったのは、WTB松島、福岡がしっかりとハイボールや裏へのボールをキャッチしていたことが要因のひとつだ。

 ティア1のような強豪と対戦するときは、やはりセットプレーが互角ではないと戦えない。マイボールスクラムは86%(5/6本)、ラインアウトは80%(4本/5本)の成功率と十二分に健闘したといえよう。スクラムは、特に前半は日本代表が押していた。また相手のラインアウトは11回(100%の成功率)あったが、ジェイミー・ジョセフHC直伝のモールディフェンスが光り、相手の得点パターンのひとつだったドライビングモールでトライを許すことはなかった。

38歳のLOトンプソンが見せた激しいタックル

中央のFLリーチ マイケル、LOジェームス・ムーア(右)とタックルするLOトンプソン ルーク 【Photo by Yuka SHIGA】

 後半、最後の25分に相手に得点を許さなかったディフェンスも勝因のひとつだ。タックル成功率はこの試合は150回して23回ミスの87%と数字上やや落ちて相手にラインブレイクを5回も許してしまったが、28対21のままノーサイドを迎えた。

 タックル回数はLOトンプソン ルークと、FLピーター・ラブスカフニが20回で最多タイだ。38歳でワールドカップ日本代表最多13試合出場の記録を更新したトンプソンのすごみは、タックルミス0回で成功率100%、さらに相手を反対側に倒し切るドミナントタックルも5回と両チーム最多だったことだ。

 また日本代表のペナルティが7回と規律を守れていたことも特筆すべきだ。前回大会で大敗したときは4本のPGを決められたが、ゲーム展開もあって、プレースキックが武器のSHグレイグ・レイドローにPGを決められることはなかった。

アタッキングマインドと攻撃戦術が合致

台風の影響で開催が危ぶまれたが、横浜国際総合競技場には多くのファンが集まった 【Photo by Yuka SHIGA】

 いずれにせよ、日本代表は相手に主導権を握られる前に、アタッキングマインドを持って積極的に攻撃し、後半5分までに28対7とリードを広げたことが試合を決めた。受け身になりがち、守りがちとなってしまう中、大一番で攻め切った。4年間で培ってきたアタッキングマインドと攻撃戦術が合致したことが歴史的勝利につながった。

 予選プール4連勝で勝ち点19はウェールズに並びトップタイの数字であり、日本代表は堂々とプール1位でベスト8進出を決めた。10月20日、東京スタジアムで優勝2回の強豪、プールB2位南アフリカ代表と激突する。ジェイミージャパンは、日本ラグビーの歴史をさらに塗りかえることができるか。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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