10年ぶりの世陸で寺田明日香が目指すこと 「ここまでやってきたことが出せるか」
10年ぶりとなる世界選手権に挑む寺田明日香に、その意気込みと東京五輪への思いを語ってもらった 【スポーツナビ】
一度は陸上を引退し、翌年に長女の果緒ちゃんを出産。16年には東京五輪を目指して7人制ラグビーにも挑戦し、今年再びトラックに帰ってきた。心身ともに大きな変化を経て挑む今大会で、寺田は何を目指すのか。そして、その先に控えている東京五輪への思いを語ってもらった。(取材日は9月9日)
日本新を出しても「まだ完全じゃない」
そうですね、周りの方が本当に喜んでくださって。そこはすごくうれしかったなと思います。来年の五輪のことを考えていたので、(今年)早々に12秒台で走れればラッキーくらいに思っていました。結構順調にきたので、よかったなと思っています。
――2週間前(8月17日)に福井で行われた「Athlete Night Games in FUKUI」でも、13秒00の日本タイ記録(当時)を出して、そこからさらにもう一歩伸びたという印象でした。
実は、福井からそんなに大きく変えたところはありませんでした。本当にスタートだけ、「ポン」と出られただけなので。全体的にすごく良くなったというよりは、ポイントで少しいいところが出ていたという感覚です。
――具体的に「ここが一番良くなった」と感じられた部分はありましたか?
すごく良くなったというわけではありませんが、1台目から2台目のタッチダウンが少し良くなった実感があります。
――今季陸上に復帰されて、9月の頭には日本新記録をマークしました。復帰された当初は、ここまでの結果をイメージされていましたか?
そうですね。チームあすか(陸上コーチやトレーナー、栄養士など、寺田をバックアップするメンバー)のスタッフたちも信じてやってきてくれました。東京オリンピックに向けてや、世界選手権もあるので「(世界選手権参加標準の)12秒98切れればいいね」とか。逆にスタッフ以外の方たちは「え、そんな感じで出してくるの」とびっくりしたかもしれません(笑)
ただ、ラグビーをしていた頃に手術した右足首が少し痛く、まだ完全ではありません。福井でも北麓でもそうだったので、周りの方には「今回は(記録は出ないから)来なくていいよ」と言っていたんですが、出てしまったので逆に怒られました(笑)。
――世界陸上に向けて、その場所を治療していくことになるのでしょうか?
シーズン中は走らなければいけないので、完全に痛みをゼロにするのは無理だと考えました。痛みをコントロールできるようにケアを進めていて、(痛みが最大10のうち)4以上になるとだいぶ庇ってしまうようになるので、3.5くらいに留めようという方針でやっています。
基礎的な走力がないと「ファイナルに行くとは言えない」
高野コーチ(左)と「答え合わせ」をしながら、効率的な走り方を探しているという 【スポーツナビ】
走ること自体を中心に練習しています。ハードルの技術に関してはわりと短い時間でできたので、今は試しにさらっと跳ぶくらい。それよりも先に大事になるのは、スピードをどれだけ上げられるかだと思っているので、約1カ月間で少しでも足を速くできるようにしています。
――走力は、世界で戦っていく上で一番大事なことと考えているのでしょうか?
そうですね。どれだけハードルが上手になっても、基礎的な走力がないと「ファイナルに行く」とは言えない。なので、できるだけ100メートルのタイムを11秒台前半に持っていきたいと思っています。
――日本新記録を出した日にお話をうかがった時、以前と違って練習に「遊び」を入れるようにしているという言葉が印象的でした。それはどういった意味なのかを教えてもらえますか?
普段は120〜150メートルの練習が中心で、あまり長い距離を走らないんですが、例えば今だと200メートルを走ったりするんです。そういう中で、「いかにサボるか」を考えています(笑)。正確に言うと、「4本あるな、どうサボろうかな」と、1本1本の走りの中で走り方を変えて、どれが効率的なのかを探しているんです。今は自分の中でこういう体の使い方をしていて、そこに向けたイメージ像があるけど、それを客観的に見た高野(大樹)コーチは何と言うか、答え合わせをして。「今の(使い方)で合っているんだな、そうしたらここから出力を上げていこう」という感じで遊んでいます。