寺田明日香の日本新を生んだ柔軟な思考 多忙な日々も「私にとって全部がプラス」
日本新記録をマークした寺田明日香。27日開幕の世界選手権の参加標準記録も突破した 【写真は共同】
愛娘の果緒ちゃんも祝福
課題としていたスタートが決まった。日本タイ記録を出した8月17日の大会では「よいしょ、という感じで出ていた」と、スムーズな加速につなげる入り方ではなかったという。そこでこの日は「(コーチの)高野(大樹)さんとも話した通り、1台目だけを意識しました。思いっきり出ることだけを考えた」と、スタートから勢いよく飛び出した。スムーズに出られたおかげで「中間部分はリラックスして、足が自然に回るのを止めないように走りました」。追い風にも背中を押されるままに、自然体で加速し、速度を落とさずにゴールテープまで駆け抜けた。
多くの経験を経て身についた、柔軟な考え方
「1台目だけを意識」し、自然体で加速することに成功。快挙達成に結びつけた 【写真は共同】
普段の練習は1週間のうち3、4日行う。午前中はウエートトレーニングや、標高2000〜2500メートルの高地を想定したサイクリングなど、体力面が中心。午後はトラックでの練習を重点的に行う。また、寺田が勤めるパソナグループでの業務をこなすために、練習のない日は打ち合わせや、社内での取材にも対応。その上で料理など、家事も並行してこなしている。陸上、仕事、そして子育てと“ママハードラー”として大忙しの毎日を送るが、寺田はこう語る。
「私にとっては、全部がプラスになっています。子どもがいるから頑張れる。練習も今は『楽しい』という感情しかないです。もちろんきついメニューもあるけど、その中でもどこかに遊びの要素を入れてやるようにしています」
また、7人制ラグビーで「曲がる」「止まる」といったハードルにはない動きを練習したことによって、筋肉をどう使えば効率良く前に進むのかを学ぶことができた。当時、積極的に取り組んでいた筋力トレーニングは、上体の安定感を身につけるのに役立った。こうした経験があったから「いろんな方からアドバイスをもらって、それをポジティブに捉えられるようになった」。さまざまな出来事から、自分にとってプラスになるものを選び取れるようになったことが、日本新につながったと言えるのではないだろうか。
世界陸上では「12秒84を出したい」
出場が決まれば10年ぶりとなる世界選手権へ向けて、「きょうはうれしいけれど、目指すのはもっと先。大きい舞台でも、これくらいのタイムを出さないといけないと思います。あわよくば(東京五輪の参加基準である)12秒84を出したい」と意欲を見せた。前回のロンドン大会では、12秒86が決勝への進出ラインだっただけに、目標とする84を出せれば、世界のファイナリストも見えてくる。快挙を達成した喜びよりも、寺田は世界の大舞台を見据えている。
(取材・文:守田力/スポーツナビ)
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