今年も混戦模様のB1西地区 6クラブの台所事情と上を目指す選手たち

カワサキマサシ

大阪の走るバスケの鍵となる伊藤

大阪が得意とする「走るバスケ」を具現化させた伊藤 【(C)B.LEAGUE】

 大阪はbjリーグ時代に3連覇を達成した天日謙作HCが、9シーズンぶりに復帰。天日HCが標榜する“走るバスケ”で、チームスタイルは一変した。

 昨季は1試合平均68.6得点と、リーグ最低のスコアを記録。しかし今季は走って速い展開を作ることで攻撃回数を増やし、実際にアーリーカップ関西では3試合中2試合がB2クラブとの対戦だったが、1試合平均91.3得点は参加6チーム中唯一の90点台をマークした。

 大阪の走るバスケのキーマンになるのは、京都から移籍で加わった伊藤達哉。スピードに定評があるPGはアーリーカップでも持ち味を発揮し、速い攻撃を組み立てて天日HCが求めるスタイルを具現化させた。さらに琉球からアイラ・ブラウンが加わったのも、チームにスケールアップをもたらした。ブラウンは元日本代表であり、帰化選手では国内トップクラスの存在。3番ポジション(スモールフォワード)もこなせて、外国籍選手2名との同時起用も可能になる。コート上にいわゆる“オン3”状態を作れるのは、相手チームに対して大きなアドバンテージだ。

 図抜けた存在がいない西地区で、今季の大阪はCS出場を現実的に狙えるチームになった。

齋藤ら若い新加入選手たちが滋賀に勢いをもたらすか

A東京から加入した齋藤ら若手が、滋賀に勢いをもたらすことができるか 【(C)B.LEAGUE】

 昨季の滋賀は3シーズン連続でB2降格争いに巻き込まれながら、みたび驚異の残留力を発揮してB1に生き残った。今季も指揮を執るのはショーン・デニスHC。滋賀を率いては、これが3シーズン目となる。

 今季は昨季のロスターから、約半分の6人を入れ替え。新戦力ではともにA東京からの期限付き移籍で、先のワールドカップ(W杯)に日本代表として出場したシェーファーアヴィ幸樹、2017年にU-24代表に選ばれた齋藤拓実と若い才能が加わったのが注目ポイントだ。彼らと同世代の佐藤卓磨、高橋耕陽も昨季から引き続いて在籍し、若いチームになった。

 デニスHCが目指すのは、アップテンポなバスケ。これまでのシーズンは後半にガス欠気味になっていたが、若くて走れる彼らの存在でそれがシーズンを通じて貫ける可能性もある。現実的な目標は昨季の18勝から勝ち星を積み上げて、降格争いに関与しないことだが、若い選手同士が互いに刺激し合い、それがチームの勢いにつながれば面白い存在になるかもしれない。

元NBAプレーヤー・ディオグに期待がかかる島根

島根に新加入したディオグ。NBAで7シーズンプレーし、先のW杯にもナイジェリア代表として参加している 【Getty Images】

 1シーズンでのB1復帰を果たした島根は、8月末にバンダイナムコエンターテインメントが経営権を獲得したことが話題になった。

 今季を戦うにあたり日本人選手では前福岡の山下泰弘、前京都の頓宮裕人、2016-17シーズン以来の復帰となる安部潤と経験のある選手に、ルーキーの神里和が加入。3人の外国籍選手は総入れ替えで、中でもNBAで7シーズンのプレー経験があり、インサイドだけではなくアウトサイドも得意とするアイク・ディオグには、チームの軸としての期待がかかる。

 新たな経営体制になったのは開幕が近づいたタイミングで、チーム編成も含めて本当の意味で新生されるのは来季以降になりそうな様子。これまでは地方の小規模クラブだった島根が変革する姿を見せるためには、今季はなんとしてでもB1残留を果たしたいところだ。

 今季が終了すると、来年の夏には東京五輪が控えている。そういう意味では今季のBリーグは選手にとって、東京2020に直結するシーズンでもある。W杯でプレーした名古屋Dの安藤、滋賀のシェーファーアヴィは、東京五輪のメンバー争いに名を連ねてくるだろう。190センチの長身PG中村(京都)がリーグ戦で飛躍的な成長を見せれば、代表の司令塔のサイズアップが果たせる。ほかに滋賀の高橋は昨年11月に、アジア地区2次予選の代表候補に選出された実績があり、24歳と若い大阪のスピードスター伊藤も、代表で可能性を見てみたい存在だ。

 東高西低とされるリーグ同様に、代表選手は東地区所属チームの選手が主体だが、今季は地区内の順位争いとともに、西地区でプレーする選手がどれだけ代表入りに絡んでいくかにも注目したい。

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著者プロフィール

大阪府大阪市出身。1990年代から関西で出版社の編集部員と並行してフリーライターとして活動し、現在に至る。現在は関西のスポーツを中心に、取材・執筆活動を行う。

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