B1東地区は激戦区がウルトラ激戦区に チームに変化をもたらす期待の選手たち

大島和人

世界を見据えたリーグ戦という日常

リーグ戦という日常が戻ってくる。日本バスケにとっても重要な場だ 【(C)B.LEAGUE】

 季節はスポーツの秋。いろいろな競技の盛り上がりに圧倒される今日この頃だが、10月3日(木)には横浜アリーナでB1の開幕戦が行われる。

 男子日本代表は9月に中国でワールドカップを戦い、5戦全敗で終えた。日本バスケにとってはまず「アジア予選突破」「世界経験」が大きな収穫だ。一方でコンタクトプレー、スキルなどの課題は正視するべきで、その解消にはリーグ戦という日常から取り組まねばならない。

 開幕まで300日を切った東京五輪に向けて、2019-20シーズンは勝負の1年になる。五輪やその後に向けた新顔の台頭にも期待したい。

 東地区は昨季のチャンピオンシップ(CS)で4強に入ったチームのうち、3つが所属するB1の激戦区だ。昨季は下位に沈んだ秋田ノーザンハピネッツ、レバンガ北海道が精力的な補強で底上げをしており、「激戦度」はより高まっている。

 今季の陣容を見て気になるのは「3人目の外国籍選手」の起用方法だ。東地区の6チームは全て3人の外国籍選手と契約しているが、今季は昨季に続いて試合あたりのベンチ登録が2名。今季は保険的な契約が減り、序列を感じない3人がそろうケースが一般的になった。土日で別の選手を起用する使い分けが増えるだろう。

千葉の注目新加入は晴山とフリッピン

京都から千葉へ加入した晴山(7番)は、どこまでフィットするか 【(C)B.LEAGUE】

 千葉ジェッツは2018-19のレギュラーシーズンを52勝8敗で駆け抜け、B1の史上最高勝率を記録した。ポイントガード(PG)の富樫勇樹が全体の半分近い計26試合で、第4クォーター(Q)のコートに立っていない。第3Qの段階でほぼ勝負のついていた試合が、それだけ多かった。

 しかしCSは2季連続で準優勝にとどまり、今季はその悔しさを晴らしたい。

 石井講祐(サンロッカーズ渋谷)、アキ・チェンバース(横浜ビー・コルセアーズ)の移籍はあったが、戦力的に落ちた印象はない。チームを躍進に導いた大野篤史ヘッドコーチ(HC)も当然ながら留任している。

 注目の新加入は晴山ケビン、コー・フリッピンの2人。晴山はシュートが打てて機動力が高く、リバウンドなどオールラウンドな役割を果たせる。

 フリッピンは米国育ちの日本人選手で、大卒ルーキーで23歳。190センチ・75キロと細身だが、身軽なドリブルでゴール下に切れ込み、重力を感じさせない高い飛翔を見せる。彼の持つリズム、スムーズなステップは今までの日本バスケになかったものだ。

 インサイドはギャビン・エドワーズ、ジョシュ・ダンカン、マイケル・パーカーが残留。加えて大卒ルーキーの米国人パワーフォワード(PF)ニック・メイヨが加わった。メイヨはNBAドラフトの指名こそ受けられなかったが、走力やスキルが高くシューターを生かす賢さも感じるビッグマンだ。

継続感が強い宇都宮と王者・A東京

須田は琉球からA東京へ加入。攻撃の幅を増やす活躍が期待される 【(C)B.LEAGUE】

 宇都宮ブレックス(7月8日に栃木ブレックスから改称)は昨季49勝11敗と好成績でレギュラーシーズンを終え、セミファイナルで千葉に敗れた。竹内公輔、比江島慎といった代表組はもちろん、ライアン・ロシター、ジェフ・ギブスが残留。安齋竜三HCも3季目で、スタイルに大きな変化は無いだろう。

 ただし、9月16日に発表されたシャブリック・ランドルフとの契約はサプライズだった。NBAで通算146試合のキャリアを持つ35歳、近年は中国のCBAでプレーしていた208センチ・107キロのPFでロシター、ギブスの鉄板コンビに割って入り得る存在だ。

 若手は25歳の鵤誠司にもう一皮向けてほしい。185センチ・95キロと「ラグビー体型」だが、PGも務まるスキルの持ち主だ。

 昨季のアルバルク東京は44勝16敗の東地区3位でレギュラーシーズンを終えた。ワイルドカードで進んだCSは新潟アルビレックスBB、琉球ゴールデンキングスを退けてファイナルに進み、千葉ジェッツを下して2連覇を達成した。今季はルカ・パヴィチェヴィッチHCが3季目に入り、日本代表の竹内譲次、田中大貴、安藤誓哉も健在だ。

 しかし日本代表の馬場雄大がNBAのダラス・マーベリックスと契約し、今季は米国でプレーする。また齋藤拓実、シェーファー・アヴィ幸樹が期限付き移籍で滋賀レイクスターズに移った。それぞれの成長を考えればプラスだが、チームへの短期的な影響は間違いなくマイナスだ。

 一方で須田侑太郎の移籍加入はプラス。安藤、田中がハンドラーとしてピック&ロールを仕掛けるスタイルの中で「幅を取る」「キックアウトから3Pシュートを決められる」タイプの補強は急務だった。須田は3Pシュートが巧みで、守備にも定評がある。

 外国籍のインサイドプレイヤーは今季もアレックス・カークが軸。大型で機動力があり、攻守に体を張れる選手だ。ジェフ・エアーズはNBAで優勝経験を持ち、一昨年以来の復帰となる。ミラン・マチュワンは初来日で、206センチ・110キロのビッグマンながらスキル、状況判断に優れたタイプ。W杯本大会ではプレーしなかったが、セルビア代表経験を持つ大物だ。

 9月29日に決勝戦が行われたFIBAアジアチャンピオンズカップも制しており、昨季に引き続いて期待できそうだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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