沖縄尚学・比嘉監督が真夏の甲子園を回想 「自ら休むと言える環境づくりが大事」

仲本兼進

習志野に延長戦で敗れ1回戦で姿を消した沖縄尚学は、甲子園の「熱さ」をどのように感じたのか 【写真は共同】

 今年も例外なく猛暑が続いた日本の夏。その最中に行われる全国高校野球選手権大会は夏の風物詩となっており、毎年注目の的となる。だからこそ檜舞台に立つ選手たちのケアは必要不可欠であり、なおかつ暑さに耐えうる体づくりにも対策が講じられている。

 その暑い時期ならではの対策を日本最南端の地、沖縄のチームはどのように行っているのか。今年夏の代表校となった沖縄尚学の比嘉公也監督に選手のコンディショニングの管理と暑さ対策について伺った。

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沖縄より甲子園のほうが蒸し暑かった

沖縄尚学の比嘉監督は「沖縄より甲子園のほうが蒸し暑かった」と振り返った 【写真:仲本兼進】

――夏の甲子園には2014年大会5年ぶりの出場となりました。久々に感じる甲子園の暑さはいかがでしたか?

 暑かったですね。ほんとうに暑かった。でも沖縄と比べれば、甲子園のほうが蒸し暑かったなという印象です。直射日光はたしかに沖縄は暑い。けれども影に入れば涼しいんです。それが内地では、何もしなくても汗が止まらないといった感じ。

 35〜36度といった気温の中での試合はわれわれもそう経験することではないので、大阪に来てまず暑さに慣れること。それだけで一週間かかりました。実際にウォーミングアップでバテている様子が目に見えていたので、暑さを考えてノックとか実践練習の量を減らしたりしました。

――コンディショニング調整に余念はなかった?

 沖縄でこなせた練習量も内地ではできないぐらいの暑さでしたから。調整する時間は必要でした。あと練習中はとにかくクエン酸であったり塩分、ビタミンが摂れる食べ物や飲み物、サプリメントを摂取させて疲労回復や痙攣(けいれん)の防止につなげたり、練習後には必ずプロテインを飲ませて体重を落とさせないよう気を配りました。宿舎に戻れば五輪でも推奨されているクールバスを設置し、氷水を溜めて全身浸かり、アイシングさせたりもしました。冷たいので入りたがらない子もいましたが、体に熱をもたせるといけないのでここは強制的に立ち入り、入らせるようにしました。

――夏の暑さにどのように対応するかが重要だったということですね。

 暑さに関してはどの学校に対しても条件は同じですし、試合でデメリットになったところは特にありません。野球は外でやるスポーツですし、暑さの中で体を慣らさないといけないという部分もあると思う。というかそれしか基本的にはないので、一番暑い時間帯に練習することもひとつの方法です。体に慣れさせることも大事じゃないかなと思います。

 やりすぎも当然いけないですし、そのさじ加減のところで指導者がきちんと見ていないといけない部分だと思います。もしも今の大会のレギュレーションがナイターならば当然夜に練習するし、今のレギュレーションならば結果的に明るい時間帯で練習をする。高校野球はドームではなく屋外でやるスポーツなので、どうしても天候に左右されやすい。雨とか暑さとかに左右されるのは正直分かり切ったことなので、そこにあまりにもナーバスになりすぎているところはあるんじゃないかなと思います。

 僕が現役のころと比べれば暑さの質は違う。今が暑い。そういった点では今回の夏の大会では休養日を設けているので、高野連(日本高等学校野球連盟)はすごく理解しているんじゃないかなと思います。3連戦3連投が無くなっている時点で僕は良かったなと思います。

議論の際は「選手にアンケートを取ってあげるべき」

ドーム球場で開催すべきという声に対しては「現役の選手にアンケートを取って、その声を拾ってあげるべき」とコメント 【写真:仲本兼進】

――暑さの質は年々変わってきていると感じますか?

 そう思いますね。年々厳しくなっている感じがします。沖縄でも昔は32度ぐらい上がれば異常じゃないかと思えたことも今では普通に34度ぐらいまで上がっているわけですから数字的に見ても上がっていますよね。

 無理をさせないというか、練習中に自分が変だなと思ったらすぐ休めと常々選手には言っていますし、休ませたほうが得策です。運ばれて点滴打ってずっと病院で寝ているよりも、30分でも休んで回復して戻ったほうがメリットがあるということを自分で考えられなかったら厳しいと思います。一昔前は根性が称賛されたところもあると思いますが、今はデメリットしかない。自分から休みますと言える環境づくりが大事だなとは思います。

――もう少し早い時期から高野連が動いてくれれば、という思いはありましたか?

 それは一概にそうとは言えないですね。連投でやったほうが状態の良い子もいると思うし、もっと早くやってほしかったなとは思っていないです。基本的には決められたルールの中に従ってやっていくスタンスなので、その中で今回から休養日が増えましたし、それだと助かるねという感じですね。休養日はあったほうが良いのはもちろんで、この先いかに高校野球がより良い方向にいくことを考えたほうがいいと思うので、そういった意味では良いスタートになったんじゃないかなと思います。

――ドーム球場で開催すべきという声もあがっています。

 大人が子どもたちのために考えてドームが良いかという議論は当然出てくると思うのですが、現役の選手にアンケートを取って、その声を拾ってあげるべきだと思います。高校生が主役なので。きっと甲子園でやりたいという声の割合のほうが高いと思うんですけれど、甲子園という存在を大事にしながら僕はやったほうがいいと思います。

――球数制限についてはどのように捉えていますか?

 設けられるのであればわれわれはそのルールに従うだけです。ただ実際にそうなったとき、バットを振らずに球数を増やさせるみたいな戦い方になると思うし、それを第三者が見ていて面白いのかということにもなると思います。球数を制限するよりかは、僕は金属バットを飛ばないようにすることが必要なのではないかなと感じています。

――金属バットのルール化が必要?

 金属バットの反発係数を抑える。それが一番手っ取り早いというか、正直今のバットは飛び過ぎだと思います。見ている側は(反発係数の高い金属バットだと)ホームランがでたり点が入って面白いと思うのですが、それが結果的に球数にもつながっていると思うんです。連打され、常に厳しいコースに投げざるを得なくフォアボールになったり、ちょっと詰まっていた打球でもホームランになってしまう。

 木製バットならばそういうこともありえないでしょうけれど、ただ折れたら折れたで資金力のあるところと無いところで差がでてしまうだろうし。使っている金属も厚いやつで割れにくいバット。実際に飛びにくいバットもあるわけですから、ルール化してそれを使えばいい。球数を議論する前に反発力の高い金属バットのほうが先だと個人的には思います。
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著者プロフィール

1978年生まれ、沖縄県那覇市出身。県内ラジオ局に11年間勤務。FC琉球応援番組の制作を機に様々なスポーツの現場に密着取材。2013年に独立し、ライターに転身。Jリーグ登録フリーランスの琉球担当記者として、『EL GORAZO』、『サッカーダイジェスト』、『サッカーマガジン』、『J’sGOAL』、『ゲキサカ』、『スポーツナビ』、そして地元紙などに寄稿。また、高校野球などアマチュアスポーツの取材も精力的に行なう。

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