大迫は東京マラソンに出場すべきか?
「代表ラスト1枠」の設定が超難問
日本記録保持者の大迫は代表内定の2位以内に入れず、今後、難しい判断を迫られることになる
日本記録保持者の大迫は代表内定の2位以内に入れず、今後、難しい判断を迫られることになる【写真は共同】

 東京五輪のマラソン代表を一発勝負で決めるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)が15日に行われ、男子は中村匠吾(富士通)、服部勇馬(トヨタ自動車)が、女子は前田穂南(天満屋)、鈴木亜由子(日本郵政グループ)がそれぞれ代表権を確定させた。


 代表の残り1枠は、今後の「MGCファイナルチャレンジ」で派遣設定記録を切った最速のランナーが選ばれるが、出なかった場合は今回3位に入った大迫傑(Nike)、小原怜(天満屋)の2人が男女の代表に内定する。


 従来と異なり、一発勝負で枠を争ったMGCが代表選考に残した意義は? 日本記録保持者でありながら3位に終わった大迫は、日本記録更新を狙える高速レースの東京マラソンに出場すべきか、それとも東京五輪へ万全の調整をするべきか。


 大迫にとって早稲田大競走部の先輩にあたり、現在はプロランナーの八木勇樹さんに解説いただいた。

選考方法の明確さは選手にもプラス

優勝した中村(左)、2位の服部勇は東京五輪までの調整期間を1年間とることができる
優勝した中村(左)、2位の服部勇は東京五輪までの調整期間を1年間とることができる【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

ーー 一発勝負のMGCが終わりました。結果が出た今、選手目線からMGCを評価するといかがですか?


 時期も含め本番を想定した選考方法で、また1年前に選出されると五輪まで余裕を持って調整できますから、そういう意味でも良かったと思います。設楽悠太選手(Honda)の飛び出しはどうだったのか、などSNS上などで議論にもなっていましたが、これもやってみないと分からないこと。ペースメーカーのいないレースなので予想ができません。海外では一発勝負の代表選考はそれほど珍しくありませんが、1つのレースの順位やタイムで選んでいくのは、選考方法として明確でいいと思います。


 今までのように冬場の高速レースでの選考であれば、だいたいが1キロ3分で30キロまでペースメーカーとともに行って、そこからどこまで耐えられるかという「30キロ+12.195キロ」のレース展開でした。これだとスピードがある選手が有利になります。また、選考レースが複数あるなかでどれをチョイスするか、というレース選びも重要な要素でした。


 今回のほうがよりタフなレースとなったので、レース展開の読みや実際のレース運び、暑さに強いか、駆け引きへの対応、もちろんスピードも、そういったものも含めた実力が出た結果だと思います。タイムだけでは測れないトータルの強さと言いますか。ペースメーカーのいない選考レースというのは今までにあまりなかったと思いますし、五輪本番を考えれば選手にとってデメリットはありません。


ーーMGCの経験が五輪に生きるとすると、どのあたりでしょうか?


 調整方法が特にそうだと思います。暑さを避けた選手や、慣れるために暑いなかでトレーニングを積んだ選手もいると思いますが、その経験がそのまま五輪本番につながります。これだけ暑いレースのなかで行われるマラソンは世界的に見てもあまりありません。ベルリンなど涼しい都市では9月のマラソンもありますが、暑い都市ではまずやらないので。


 あと、女子を制した前田穂南選手は、シンプルに力で勝っていると言えるほど、レース展開が圧勝でした。五輪本番での心配があるとするなら、スピードある海外勢のペースの上げ下げに対応できるか。今回、日本選手は前田選手の飛び出しに誰もついていけませんでしたが、海外勢は平気でついてくるかもしれない。そのあたりの海外勢のスピードや強烈な駆け引きを知るためにも、海外レースに出たほうがいいかもしれないですね。


ーー24年パリ五輪に向けてなど、今後の代表選考にも影響を与えそうですね。


 MGCを継続するのか、それか今は(国際陸連によって)世界ランキング制度が始まっていますので、それをうまく反映させることもできます。いろいろなレースを経験して本番で戦える、良い結果を出せる選手を選考するには、MGCとともにそういうランキング制度を有効活用するのはひとつの手だと思います。

東京マラソン出場で、東京五輪への影響は?

ーー男子は残り1枠を懸けて、タイムを狙える来年3月の東京マラソンに有力選手が集まりそうです。同8月の東京五輪へ、影響はないのでしょうか。


 男子は2時間11分、12分台で決着した今回のレースですが、選手たちはかなり消耗したはずです。この疲労を完全に抜く前にトレーニングするとケガやコンディション不良に陥りやすくなるので、しっかり休養期間を設けなければなりません。3月の東京マラソンに向けて、その後は8月の東京五輪に向けて、と連続で大一番がやってくることを考えると、けっこうタイトなスケジュールだと思います。


 一般的に、疲労を抜くのに1カ月、その後3カ月から4カ月はトレーニング期間に充てたいところです。それもあってマラソンは年間に2レース、走れても3レースという選手が多いんです。


 今回はそれに加えて暑さ、また心理的な疲労もかなりあると思います。相当な緊張感のなかでのレースでしたから、この後を考えている選手ってなかなかいないと思うんです。さあもう1回とすぐに切り替えるのはなかなか難しいですし、メンタルが伴ってこないとトレーニングに身も入らないと思うので。


 万全の調整をタイトなスケジュールのなかで、しかも2レース連続で行うというのは、とても難しいことなんです。

構成:スポーツナビ

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