“時代”を映す人気ユニホームの数々 「BECKHAM」が読めない世代も…

構成:YOJI-GEN
 スポーツナビで投票を募った「海外サッカー・ユニホームランキング」企画。スペイン、イングランド、イタリア、ドイツの11クラブの歴代ユニホームの人気投票トップ10をお送りしてきたが、最終回は、ユニホームのスペシャリストによる総括をお届けする。ご登場いただくのは、吉祥寺、渋谷、町田、心斎橋、四条河原町と、全国に5店舗を構えるユニホーム専門店「Vintage Sports FOOTBALL」の代表取締役社長の川畑隆博氏だ。専門店ならではのエピソードも交えて語ってもらった。

グアルディオラの監督就任で脚光浴びる

創設100周年記念モデルをまとった99-00シーズンのグアルディオラ(後列右端)。監督としてバルサに戻ってきたとき、当時のユニホームを求める人が増えたという 【写真:アフロ】

 うちのお店における傾向として、シーズンの成績によって人気が出る場合とユニホームのデザイン性によって人気が出る場合と、ふたつあります。

 バルセロナで前者のケースは、ランキングでも1位に輝きましたが、ルイス・エンリケ監督のもと、3冠を達成した2014-15シーズンのモデル。これを求めるお客さんは結構います。

 後者のケースで典型的なのは、6位になった15-16シーズンのモデル。初めて横ストライプが採用されたんです。当時、ファンの間でも賛否が分かれていましたが、デザインがガラッと変わると印象に残るのか、あとあとになって人気が出るようです。

 7位の1999-00シーズンは、左半分がエンジで1899年、右半分が紺で1999年と入った創設100周年記念モデル。これは、グアルディオラが監督としてバルサに戻ってきたとき、グアルディオラのネームが入ったユニホームを探しに来られた方が多かったですね。もちろん、リバウドも、フィーゴも人気なんですけど、このユニホームに関しては、グアルディオラが人気でした。

 これもデザイン性の範疇に入るかもしれませんが、サプライヤーが変わって数年経つと、以前のサプライヤー時代のものが懐かしくなるのか、求めにくるお客さんが増えます。バルサの場合、98-99シーズン以降、ずっと「ナイキ」ですから、逆に「カッパ」時代のモデルを探しにくるお客さんがいます。

 全体的に見れば、メッシのユニホームは、どの時代でも人気があります。ただ、イニエスタがヴィッセル神戸に加入したときは、イニエスタのユニホームの需要が一気に高まりました。

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 レアル・マドリーで人気なのは、クリスティアーノ・ロナウドです。どのモデルでも人気がありますが、ユベントスに移籍したとき、レアル時代のものがかなり売れました。今後はユーベのものしか買えなくなってしまうので、急に欲しくなったんでしょうか。

 C・ロナウドより前の時代では、ラウールの人気が高いです。あと、ジダンも。グアルディオラと同じで、監督としてレアルに戻ってきたとき、ジダンの昔のユニホームを求める人が増えた印象があります。

 これはレアルに限らず、全般的に言えることですが、ユニホームにゴールドが入ると人気が高まる傾向があります。レアルの場合は11-12シーズン。人気投票では5位にとどまったようですが、うちのお店ではかなりの人気を誇ります。

 投票結果を見ると、レアルは10代のファンの投票が多いようですね。たしかに、うちのお店でも、若い子に人気が高い印象があります。学生の方々もよく訪ねてきてくれますが、銀河系軍団の時代のベッカムの23番のユニホームを眺めていた学生たちが「これ、なんて読むんだろうね?」と。「BECKHAM」を読めなかったんです。そういう時代になってきたのか、と驚きました(笑)。

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ベッカム「10番」は1年だけのレアモデル

7番のイメージが強いベッカムだが、96-97シーズンには1年だけ10番を背負った。このユニホームも根強い人気を誇っている 【写真:Action Images/アフロ】

 リバプールで最も人気なのは、投票でも1位でしたが、チャンピオンズリーグ(CL)決勝でミランに大逆転勝利を飾った04-05シーズンのモデルです。

 選手で人気なのは、ジェラードとフェルナンド・トーレス。その前の時代になると90年代半ば、ファウラーやマクマナマンのユニホームも人気があります。あと、胸スポンサーに「カールスバーグ」が入っているモデルを探しに来られる方も多いです。「カールスバーグ」の時代が長かったので、懐かしいんだと思います。

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 アーセナルも人気投票と同じで、無敗優勝を達成した03-04シーズンのモデルがよく売れます。マニアックなところで言えば、6位になった07-08シーズンのモデルです。ただし、人気投票とは異なり、3rdユニホーム。エンジと紺の横縞という珍しいデザインなんです。当時、「早稲田のラグビー部のジャージみたい」と言われていましたが、人気があります。

 そう言えば、今季のアウェーモデルは、92-93シーズンのアウェーモデルのリバイバルなんです。92-93シーズンのアウェーモデルは黄色にグレーの幾何学模様が入っていて、当時は「傷んだバナナ」と言われて酷評されていました。それがリメイクされて、カッコ良く仕上がっています。

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 マンチェスター・ユナイテッドはやはり、「カンプ・ノウの奇跡」でCL優勝を飾った98-99シーズンのモデルが根強い人気を誇っています。このモデルは、97-98、98-99、99-00と3シーズンにわたって同じデザインなんですが、細かいことを言うと、98-99シーズンにCL優勝を飾ったので、99-00シーズンのユニホームにはエンブレムの上に星がひとつ増えて、ふたつになっているんです。ファンとしては、優勝したときに着ていたユニホームが欲しいので、星がひとつのタイプにこだわって探しに来る方がいます。

 あと、96-97シーズンのベッカムのユニホームも人気があります。ベッカムと言えば7番ですが、実は7番の前に1シーズンだけ10番をつけていました。それが、このシーズン。その1シーズン前には24番、さらに1シーズン前は28番と、ベッカムは当時、背番号がころころと変わっていて、いずれも需要があります。

 100周年記念の01-02シーズンのアウェーモデルも、なかなかマニアックですが、人気があります。2ndが白で、3rdがゴールドなんですが、それらをリバーシブルにして一般販売された珍しいモデルなんです。ちなみにこの100周年というのは誤解されがちなんですが、クラブ創設100周年ではなく、前身であるニュートン・ヒースというクラブからマンチェスター・ユナイテッドに変わってから100周年という意味です。

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 チェルシーにおける人気モデルは、なんと言っても、モウリーニョが監督に就任してリーグ戦とリーグカップの2冠を達成した04-05シーズン。さらに、クラブ創設100周年で、ゴールドが入った05-06シーズンのモデルも人気があります。選手ではやはり、ランパードとドログバが圧倒的な人気を誇ります。

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 マンチェスター・シティは投票と同じように、若い方々に人気があります。なかでも売れているのが、44年ぶりにプレミアを制した11-12シーズンのモデルでしょうか。選手では、アグエロ、ダビド・シルバの人気が高い印象です。以前は強くなかったので、その頃の昔のモデルを日本のお客さんが購入されることは滅多にありませんが、香港や韓国の方々は買われていきます。特に香港はプレミア人気が高いので、大阪の心斎橋店には、観光で訪れた香港の方が立ち寄ってくれます。

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