大谷がメジャーのトップ打者になるために あえて課題に迫り、考察する
TJ手術明けにもかかわらず、打者として好成績
トミー・ジョン手術明けにもかかわらず、バットで好成績を残す大谷 【Getty Images】
大谷翔平(エンゼルス)を巡っては、投手と打者のどちらが優れているか、あるいは専念すべきか、はたまたこのまま二刀流を継続すべきかと言った論争が常に巻き起こる。
昨秋のトミー・ジョン手術の影響で強制的に打者専念となる今季は、ある意味その野球人生にとって特殊な年となっている。類まれな素質を持つ大谷は投打どちらもすべきであり、またどちらもできるからこそ魅力なのは事実。それでも打者に専念したらどのような成績を残すのか、実際に目にすることができているのがここまでだ。
現地8月27日時点で94試合に出場。打率.297、16本塁打、54打点、OPS.864。
通常の投手なら、トミー・ジョン手術となってしまうと復帰までは試合に出場することも貢献することも不可能なのだが、打者として出場してこれだけの成績を残せてしまう。それが二刀流・大谷の大きな強みの一つでもある。
そんな大谷の打撃をさらに進化させるには、何が必要なのか。あえて課題に迫ってみたい。
「後ろで捉える」は正しくない?
比較的「後ろ」で捉えることが多い大谷だが、モーションとスピードの速い投手を相手にするには、差し込まれないよう前で捉えることも必要だ 【Getty Images】
『baseballsavant.mlb.com』によると、平均打球速度92.8マイル(約149.3キロ)はメジャー全体で10位。メジャーを代表する強打者であるクリスチャン・イエリチ(ブリュワーズ)やジョシュ・ドナルドソン(ブレーブス)、ジョシュ・ベル(パイレーツ)らと遜色ない。打球速度はトップクラスであるのは間違いない。
一方、平均打球角度は6.0度と一気に415位まで順位を下げる。本塁打の飛距離や打球速度ではトップクラスでありながら、ゴロが多く打球角度が低すぎるため、平均飛距離も161フィートと322位にとどまっている。
この原因の一つがミートポイントだろう。
あまりにも捕手寄り、いわゆる“後ろ”で捉えており、ポイントが近すぎる。そのためどうしても差し込まれやすく、打球が上がりにくい。ある意味では「パワーがあり、粗いイチロー」のような打撃をしている。差し込まれやすく、打球は上がりにくく、飛距離は出にくい。また、速球に対しては、どうしてもタイミングが遅れがちとなる。
よく「メジャーの打者はポイントが近く後ろで捉えるから、動くボールを捉えることができる」といった言説があるが、実際には正しくない。もちろんタイプにもよるが、多くの打者は理想のミートポイントで打つときにはやや前でさばいている。メジャーで投げている、モーションとスピードの速い投手を相手にするには、より一層差し込まれないような工夫、速い始動やトップの形成が必要だ。
昨年から打撃が飛躍的に向上したイエリチは、少しミートポイントを投手寄りにすることで打球が上がりやすくなり、ライト方向への引っ張った長打が増加。高打率と本塁打の両立に成功している。