桧山、矢野…阪神で学んだ指導者の責任 野村克也の指導論
第6回
ノムさんのミーティングを参考に、晩年は「代打の神様」として活躍した桧山 【写真は共同】
正直なところ、私はヤクルトの監督を退任した98年には、「これでしばらくゆっくり休めるかな」と考えていた。だが、思いもよらぬ、しかも関西で絶大な人気を誇る球団からの監督要請とあって、迷いながらも最後は、「ぜひ、引き受けましょう」と首をタテに振った。
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だが、これが大きな間違いであることに気づくのに、時間はかからなかった。春季キャンプでミーティングをやったものの、ヤクルト時代とは違って、選手たちはどこか集中力に欠けて、ソワソワ、ソワソワしている。
妙な違和感を抱きつつ、ひとしきり話をした後にミーティングの終わる時間がやってくると、「さあ、飲みに行こうぜ」と言わんばかりにそそくさと外出してしまう選手が数多くいた。これには唖然とした。
「なんだコイツら、誰もオレの話を聞いていないじゃないか」
不安は的中した。シーズンが始まると、選手の意識は変わることなく、試合に勝っても喜ばず、負けても悔しがることなく、淡々と試合数をこなしているだけのように思えた。これではチームは勝てるわけもない。
3年連続最下位――。これが私の阪神の監督時代の結果だった。今振り返っても、3年目は私自身、ミーティングに力が入らなかった。「どうせ聞いていないだろう」、私自身、そのように決めつけていたからだ。
けれども、時間が経ってから、私はこうした態度でミーティングに臨んだことに後悔した。当時は表立って言っていなかったが、後になってから私のミーティングを参考にしたという選手がいたからだ。その代表格は、桧山進次郎と矢野燿大である。
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