連載:指導者のエゴが才能をダメにする ノムラの指導論

私が考える、藤浪晋太郎の指導方法 野村克也の指導論

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第4回

コントロールに苦しみ不振に陥る阪神・藤浪に、ノムさんが指導するならどうするのだろうか? 【写真は共同】

「人を見て法を説け」――私が選手を指導する際、心がけていることの1つである。

 選手の考え方は十人十色。全員が同じ言葉、同じ指導で良しとなるはずがない。その選手の持っている性格や気質などでかけるべき言葉を使い分けてやる気を促すのも、指導者の果たすべき務めなのである。

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 たとえば、世の阪神ファンが心配していることの1つに、「藤浪晋太郎は復活できるのか」が挙げられる。
 藤浪は大阪桐蔭高校のエースとして、2012年の甲子園大会の春夏連覇を果たした。当然、この年のドラフトの目玉選手の1人に挙げられていたが、縁あって阪神への入団が決まった。
「これで10年から15年はピッチャーに困らない」――そう安堵した阪神ファンも多かったに違いない。
 藤浪は周囲の期待どおり、入団1年目から即戦力の働きを見せた。13年は10勝を挙げ、その翌年以降も11、14勝と、3年連続で2ケタ勝利をマーク。周囲の期待どおり、順調に大投手への階段を登っている……かのように見えたが、16年に7勝で終わると、17年はわずか3勝、18年も伸び悩んで5勝に終わり、復調の兆しがない。

 藤浪が伸び悩んでいる技術的な原因を挙げるならば、「ピッチングフォームをいじりすぎてしまった」点にある。入団1年目から踏み出した足のつま先が内側に入ってしまう、いわゆる「インステップ」であることを指摘されていた。
 ピッチャーがバッターに向かって投げるとき、踏み出した足のつま先がホームベースより内側に入ってしまうと、腕の振りが一定しなくなり、コントロールを乱しがちになる。その点を不安視して、阪神のピッチングコーチは藤浪本人に指摘し、矯正するように促していたこともあるはずだ。
 しかし、藤浪は袋小路に入り込み、自分を見失ってしまった。
 それどころか、彼の長所であった「空振りをとれる、威力のあるストレート」すら放れなくなってしまった。この点が実に痛い。
 藤浪自身、努力を怠ったわけではない。もがき苦しみながら、何とか現状を打破したいと対策を練り、日々の練習に励んでいるはずだ。
 しかし、それが結果となってなかなか表れてこない。序盤の3回までは好投するも、中盤の4回、5回を迎えたあたりから突如としてコントロールを乱し、手痛いタイムリーヒットを打たれて降板する……この繰り返しだ。

「技術の改善」は本人がどう修正していくかが大事だ。けれども私の耳に入ってくる情報として、藤浪自身が技術以前に改善しなくてはならない点が、別にある。
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