IDでもっと便利に新規取得

ログイン

“戦術の幅”で進化したラグビー日本代表
リーチ主将「かなり良くなっている」

「ひとつのミスが試合の局面を変えかねない」

アメリカ戦でSH流大からパスを受けるHO堀江翔太
アメリカ戦でSH流大からパスを受けるHO堀江翔太【斉藤健仁】

 3連勝した中にも、課題が出たことも今後を見据えれば大きかった。ここでのキーワードはディシプリン(規律)だ。反則数は実は3試合とも相手より上回ってしまった。フィジー代表戦こそ9回だったが、トンガ代表戦、アメリカ代表は12回と二桁を超えてしまった。


 日本代表がアタックでトライを取り切る能力が高いため、PNCではあまり問題にならなかったが、W杯ではいいプレースキッカーやモールの強いチームと対戦することも考慮すると、致命傷になりかねない。もちろん少ない方が良く、一桁には抑えたい。


 FLリーチ マイケル主将も「フィジー、トンガ、アメリカに接点、フィジカルエリアで負けなかったことは評価できる。だがアメリカは、(W杯で対戦する)ロシアやアイルランドとタイプが似ているので、今日みたいな試合をすると負ける。もう一回、ディシプリンを見直していい準備をしたい」と反省を口にした。


 またリーダーのひとりPR稲垣啓太も「ディシプリンの重要さはみんなが考えている以上に重い。ひとつのミスが流れを変えるなんて多々あります。W杯になればひとつのミスが一気に試合の局面を変えかねない。だからこそ、僕は常々、ディシプリンと言います」と規律の重要性を説いた。


 フィジー戦では相手がジャッカルに来るところをしっかりと排除したが、前に出てくるスタイルのトンガ代表にはボールに絡まれてペナルティを重ねた。アメリカ代表戦ではオフサイドの反則も多かった。試合中、改善できた部分もあったが、反則を連発する前に選手たち自身で修正していきたいところだ。

新ルールとなったスクラムへの対応

新ルールが適用されたスクラムには課題を残した
新ルールが適用されたスクラムには課題を残した【斉藤健仁】

 もう1つはスクラムだ。実はラインアウトからはモールでトライを挙げたり、相手のラインアウトにプレッシャーを与えたりと、3試合を通じておおむね合格点だった。ただし、スクラムでは試合を重ねるごとに安定しなくなっていくようにも見えた。


 やはりW杯ではマイボールのセットプレー成功率は、90%はほしい。実はスクラムは7月から新ルールとなった。スクラムを組む際、レフェリーの「クラウチ、バインド、セット」の「セット」のコール前に、FW第1列の選手は頭を相手の頭や肩につけて、支えてはいけないことになった。


 日本代表にとって新ルールでの実戦はPNCが初めてだった。そのためHO堀江は「1試合目、2試合目、3試合目と、(それぞれ)レフリーの感じが違うので大変でした。同じようなスクラムを組めないので、レフリーに対応しないといけとけない。(アメリカ代表戦は)こっちが落ちていないのに、落ちていると言われている部分があった。また合わせていきます」と前を向いた。

リーチ主将「ベスト8でも勝つ、ベスト4でも勝つ」

アメリカ戦でトライを奪うFB山中亮平。日本代表のポジション争いも激しくなっている
アメリカ戦でトライを奪うFB山中亮平。日本代表のポジション争いも激しくなっている【斉藤健仁】

 いずれにせよジェイミー・ジャパンになって、対戦時、世界ランキングでは9位と格上だったフィジー体表を倒し、収穫と課題を得て、PNC優勝という最高の形で終えた。結果、8月12日付けの世界ランキングは過去最高タイの9位へと上昇した。


 稲垣は「成熟度は高いが、ただこれからまだ、伸びると思います。ラグビーは15人の競技ですけど、結局は個人の能力の集合体なので、僕ら個人の能力が高くないと総合力が上がらない。成熟度が高いのは、今までみんなが積み上げてきたものが結果として花開いただけですが、全員がこのチームを強くさせるのに、何が必要か考え続けてディテールまで詰めた結果、成熟度が生まれた。4年間積み上げてチームとして完成度が高まり、同時に総合力が高まっている。いい流れじゃないですかね」とPNCを総括した。


 また恥骨炎のケガからPNCで復帰を果たしたリーチ主将も「(目標として)PNCで優勝ということは言っていなかった。毎試合、ベストパフォーマンスを出していく中で勝つ方がいいのではと思い始めました。W杯でもベスト8まで行こうではなく、ベスト8でも勝つ、ベスト4でも勝つ。勝つ準備はかなり良くなっている」と手応えを口にした。


 この半年、いや4年間の成長を見せてPNCを終えた日本代表。8月18日から28日までの網走合宿で、良いところはより伸ばし、課題を修正するはずだ。そして8月29日のW杯の最終スコッド発表を経て、9月6日、本番前最後となる南アフリカ代表戦を迎える。W杯で対戦するアイルランド代表、スコットランド代表を上回るようなプレッシャーの中、どこまで互角に戦えるかがW杯への大きな試金石となる。

斉藤健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。 学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「世界最強のゴールキーパー論」(出版芸術社)、「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)など著書多数。最新刊は「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版/2017年11月刊)。

スポナビDo

新着記事一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント