連載:指導者として、レジェンドたちが思うこと

ヤクルト高津二軍監督の思考と指導法 「勝つためには負けなきゃいけない」

ベースボール・タイムズ

指導者になって6年目、ヤクルトのレジェンドである高津二軍監督に話を聞いた 【花田裕次郎/ベースボール・タイムズ】

 日焼けした顔に、柔らかな笑みが浮かんだ。梅雨が明けたばかりの7月末、試合前の誰もいないベンチに腰掛けた50歳は、「われわれにとっては厳しい季節ですよ。ちょっと前までは涼しかったんですけどね」と言いながらも、心地よさそうに汗を拭った。

 NPB歴代2位、通算286セーブの記録を持つ高津臣吾。東京ヤクルトで4度のセーブ王に輝き、日本シリーズでも4度の胴上げを経験。その後、MLBでも抑え投手として活躍し、韓国、台湾、独立リーグでもプレーした経験を持つ。

 2012年に現役を引退した後は、14年からヤクルトの一軍投手コーチを務め、17年からは二軍監督として手腕を振るっている。ヤクルトの未来を担っている高津二軍監督に、指導のノウハウを聞いた。

大切にしている「勝つ以外の部分」

――二軍監督として今年で3年目です。もう随分と腰を据えた状態で日々の指導に当たっているのではと思いますが?

 慣れた部分というのはたくさんありますね。ただ、ファームは毎日、良いことも悪いこともたくさん起こる。まずはその変化に対応するのが、大変な仕事になります。もちろん一軍でもいろんなことが起こりますけど、二軍は人数も多いですし、年齢層の幅も広くて、いろんな事情を抱えている選手たちがいますからね。

――その中で普段、選手たちを前にして、どのようなことを心掛けているのでしょうか?

 二軍なので「絶対に勝つ」という考えは正直、ありません。もちろん勝つことは選手を育成する上で必要な手段の一つだと思いますけど、それよりも選手にどうやって気分良くプレーさせるか、どうやって経験を積ませるか、どうやってうまく調整させて状態を上げていけるかが大事だと思って、心掛けています。

――昨年、自著本を出版されて、そのサブタイトルが「育てるためなら負けてもいい」でした。この言葉に高津二軍監督としての考えが詰まっている?

 まぁ、そうですね。プロは勝負事なので、勝つことはものすごく大事です。でも勝つこと以外にも大事なことはたくさんありますし、勝つためには負けなきゃいけない。負けて悔しさを味わうことも必要です。勝つ以外の部分を大事にしたいという意味ですね。

 育てるためなら負けてもいい。二軍よりもっとシビアな一軍でプレーする機会が来た時に、少しでも引っ張り出せる引き出しを多く作っておけるように、いろんな経験をしておくべきだと思います。それができるのが二軍だと思っています。

村上宗隆の「立ち居振る舞い」

高津監督は村上(中央)の立ち居振る舞いについて、「年齢を感じさせない」と評する 【写真は共同】

――今のスワローズの中では、村上宗隆選手が大きな希望となっています。昨季は二軍で17本塁打を打ち、それが今季の飛躍へとつながっています。最初に村上選手を直接見た時はどのような印象を持ちましたか?

 最初に見たのは2月のキャンプの時でしたけど、その時は「まだ高校生」という印象でした。まだ卒業していない高校3年生だなと思いましたね。うちの息子も似たような年齢なんですけど、それほど変わらない印象でした。

 ただ、野球をすると変わりました。グラウンドに入る、バッターボックスに立つとなったら、年齢を感じさせないものがありました。何年もプロ野球の世界でやって来たかのような立ち居振る舞いをしていましたね。

――彼が去年1年間ファームでプレーして、一番伸びた部分は?

 伸びたかどうかは別ですけど、特に高校を出たばかりの17歳、18歳というのは、教えること、覚えさせること、プロ野球の世界に慣れさせることがたくさんある。まずはそれを経験することが第一歩です。アマチュアではないので、まずは考え方から変えて、プロとして1年間いい状態をキープすること、体のことも含めて、彼にとってはすごく勉強になった1年だったんじゃないかなと思います。

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著者プロフィール

ベースボール・タイムズ

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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