甲子園という最高の舞台を彩る応援曲 球児が好む曲調は「2つのパターン」がある

梅津有希子

昭和歌謡からクラシックまで、多岐にわたる応援曲

甲子園という大舞台を、より華やかに彩る応援曲 【写真:岡沢克郎/アフロ】

 昭和歌謡にアニメ曲、クラシックの楽曲にラテン音楽など、実にバリエーション豊かな高校野球応援曲。50年近く前の懐メロや近年のヒット曲まで、あまりにも混沌としているため、今回の「ファンが選ぶ高校野球・応援曲ランキング」では、曲が使われ始めた時代ごとに「20世紀」「21世紀」、そして学校独自の「オリジナル」(原曲があるものも含む)という3ジャンルに分けて選曲した。

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「サウスポー」に「狙いうち」、「宇宙戦艦ヤマト」「海のトリトン」など、「なぜ高校野球の応援は昔の曲ばかりやるのか」「今の高校生たちはリアルタイムでアニメを知らないのに」などと感じている人もいると思うが、彼らにとってはそんなことはまったく関係なく、「憧れの先輩が打席に立った曲を自分も使いたい」「うちの伝統だから」という理由で昔の曲を使い続けているだけなのだ。

 20世紀でダントツの最多得票となった「アフリカン・シンフォニー」は、ディスコブームの起点となった「The Hustle」のヒットで知られるヴァン・マッコイの楽曲。1974年にリリースされたアルバム「Love is the Answer」に収録されていたもので、日本では77年に吹奏楽版の楽譜が発売されるやいなや、吹奏楽界でも大ヒット。発売元のヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス出版部によると、同曲を扱う「ニューサウンズ・イン・ブラス」シリーズにおいて、直近5年間でも「人気曲ベスト10に入っている」という。毎年多数の新譜が発売される吹奏楽界において、40年以上前にリリースされた曲がいまだにベスト10入りしているというのは相当すごいこと。人気の裏には、野球応援効果も多分にあるのではないだろうか。

 2位、3位と並んだ「サウスポー」と「狙いうち」も、高校野球界で長く愛されている応援曲。多くの学校が「お前が打たなきゃ誰が打つ」という替え歌の歌詞で歌うが、話題になった中日ドラゴンズの「お前問題」もどこ吹く風。地方大会でも実に多くの学校が、今まで通りメガホンで「お前」と叫びながら、選手たちもその大声援に応えるかのように懸命にプレーしていた。

「勇ましい曲」と「1つになる曲」

作新学院などが演奏する「炎のファイター〜INOKI BOM-BA-YE〜」。選手の心を奮い立たせる“勇ましい曲”の代表格だ 【写真:岡沢克郎/アフロ】

 球場で応援風景を取材していると、選手たちが好む曲調は、大きく分けて2パターンあることに気づく。1つが「勇ましく、打席に立つと奮い立つ」曲。2つ目が、「スタンドが盛り上がり、みんなが1つになる曲」だ。

 格闘技の入場曲にも使われる曲が、まさに「勇ましい曲」の代表格で、アンディ・フグの入場曲「We Will Rock You」、スタン・ハンセンの「サンライズ」、アントニオ猪木の「炎のファイター 〜INOKI BOM-BA-YE〜」がランクイン。やはり、これらの勇ましさを感じる曲には、男の闘争心を奮い立たせる何らかの要素があるのだろうなと感じる。

 後者の「盛り上がる曲」については、代表格ともいえるのが「サンバ・デ・ジャネイロ」だ。もともと応援によく使われていた曲だが、近年「ハイヤハイヤ」「エッサエッサ」「アゲアゲホイホイ」などとコールしながら、メガホンを持って足を上げて応援する、通称「アゲアゲホイホイ」が大流行中。兵庫県の報徳学園が発祥で、「盛り上がる」と瞬く間に全国へと広まり、2017年夏の甲子園では実に半数近くの学校が同曲を採用していた。

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著者プロフィール

1976年、北海道芦別市生まれ。編集者・ライターであり、吹奏楽の応援だけを観に甲子園や地方球場に通う、高校野球ブラバン応援研究家としても積極的に執筆・講演を行っている。中高を吹奏楽の強豪校で過ごし、札幌白石高校時代に「吹奏楽の甲子園」こと普門館で開催された全日本吹奏楽コンクールに出場。連続金賞受賞した、最後の「5金」世代。主な著書は『高校野球を100倍楽しむ ブラバン甲子園大研究』(文藝春秋)など。

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