連載:夏を待つ高校野球の怪物たち

「163キロ」がもたらした思考の変化 佐々木朗希が見つめる、高校最後の夏

佐々木亨
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「イメージより大きく成長できた」

最後の夏に挑む“令和の怪物”佐々木朗希 【写真は共同】

 高校最後の夏を前に、自身の成長度合いを尋ねられた佐々木朗希はこう言った。

「(思い描いていた)イメージよりも大きく成長できました」
 大船渡の入学時に186センチあった身長は、2年春の時点で3センチ伸び、今は190センチに到達した。体重は80キロを超え、太もも周りの筋肉の厚みは、明らかに昨年とは違う。入学時にあった「線が細い」印象は、すっかりと消え去った。

 昨年春、2年生となった岩手県春季県大会1回戦で盛岡中央高に敗れた直後の言葉を思い出す。初回から150キロをマークし、公式戦では自身初となる完投。打ってはリードオフマンとして2本のレフト前ヒットに3四球と全打席で出塁。さらに2つの盗塁を決めた。ただ、試合には敗れて反省の弁が連なる。その一方で、将来への希望も並んだ。

「(試合に敗れて)力のなさを痛感しました。ストレートを張られていると思って、タイミングをずらすために変化球を要所で使ったんですが……。もっと全体的に鍛え直したい。ただ、昨年(1年時)の秋は、立っていただけでも腰が痛かったんですが、冬場は痛みもなくなってトレーニングを積むことができました。肩周りの可動域を広げるものだったり、体幹を鍛えるトレーニングだったり。体はもともと柔らかい方ですが、体重を増やす中で柔軟性をさらに持たせるためにストレッチもしっかりとやりました。そういう冬場の成果が出て終盤になっても球速が落ちなかった点はよかったと思います。3年生になったら、160キロオーバーを出したい」

 自身の現在地を見つめ、秘めた才能に期待する16歳の言葉だった。

 母・陽子さんによれば、1日6合の白飯を炊いてほしい、そう言って明確な目標を決めて体重増加に励んでいた時期もあったという。さらに、母は息子の資質をこう語るのだ。
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著者プロフィール

1974年岩手県生まれ。スポーツライター。雑誌編集者を経て独立。著書に『あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる』(ベースボール・マガジン社)、共著に『横浜vs.PL学園 松坂大輔と戦った男たちは今』(朝日文庫)、『甲子園 歴史を変えた9試合』(小学館)、『甲子園 激闘の記憶』(ベースボール・マガジン社)、『王者の魂』(日刊スポーツ出版社)などがある。主に野球をフィールドに活動するなかで、大谷翔平選手の取材を花巻東高校時代の15歳から続ける。

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