宝塚V導く25歳レーンの好判断騎乗 紅一点リスグラシュー世界が見えた圧勝劇

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恐るべき25歳、騎乗2カ月で重賞6勝、GI2勝

まだ25歳のレーン、これからどこまでの名騎手に成長するのだろか 【スポーツナビ】

 それにしても、この豪州生まれの25歳は日本での初騎乗からわずか2カ月間でとんでもないインパクトを残した。123回騎乗して37勝(勝率0.301)、うち重賞6勝、GI2勝。質、量ともにこの春のGIシーズンで最も活躍したジョッキーと言っていいのではないか。JRA短期免許最終週となるこの土日だけでも7勝を挙げ、とどめのGI有終V。漫画や小説のようにできすぎた話だが、リアルでこういうことをやってのけるのも超一流たる資質があるからこそだろう。

「この2カ月は本当に素晴らしい時間を過ごすことができました。自分でも予想できないほど良い結果を残すことができて、言葉にならないくらいうれしいです。また、これも僕をサポートしてくれた調教師、オーナー、素晴らしいチームのおかげです。日本が大好きになりました」

 そして、続けてレーンはこう約束してくれた。

「1日でも早く日本に戻ってまた騎乗したい。次に来る機会を楽しみにしていますし、さらに多くの日本のファンに出会えることを楽しみにしています」

 6月27日の帝王賞でオメガパフュームに騎乗するため、6月26日〜7月25日の期間で地方競馬の短期免許を取得したレーンだが、帝王賞後の日本での騎乗は未定とのことだけに、JRAでの騎乗はこれでしばらくは見納めかもしれない。頼りになるジョッキーがいなくなるのは純粋に競馬を見る上でも、馬券の上でも大変寂しいことだが、でも、さらに腕達者になって帰ってくるのをワクワクしながら待つ、そんな楽しみが増えたと思えばいい。

秋は米国ブリーダーズカップか豪州コックスプレートか

リスグラシューの秋は米国か豪州か、それとも…… 【スポーツナビ】

 一方、本来の主役であるリスグラシューもまた、素晴らしいのひと言では片付けられないほどのパフォーマンスを披露した。もともと堅実さが売りの馬だったが、それにしても昨秋のエリザベス女王杯でGI初勝利を飾ってからの充実具合は目を見張るばかり。父ハーツクライの遅咲きの血が満開となったことは間違いないが、それは肉体面よりも精神面の強化が大きいと、矢作調教師は分析する。

「香港で2回競馬をしたことで馬が力強くなりましたね。海外遠征からの帰国初戦は良くないとも言われますが、リスグラシューの場合はむしろそのことが糧になっていますね。エリザベス女王杯あたりから体質が強くなってきたとは思いましたが、香港に行ったことで精神面がそれ以上に強くなりましたね」

 そうであるから、海外帰りのこの中間も何も心配しないでいいくらいに調教できた、勝てると思っていた前走よりもさらに出来が良かった、と振り返った矢作調教師。そして、宝塚記念勝利の副賞として米国ブリーダーズカップ・ターフ、豪州コックスプレートという2カ国を代表する芝GIレースへの優先出走権を得たことで、リスグラシューの世界戦略の幅はこれまでの東アジアから大きく広がったことになる。

「この強さならブリーダーズカップはフィリー&メアではなくターフに挑戦したくなりますね。コックスプレートも今日のような競馬ができるんだったらと思いますし、ボーナスも大きいですからね(笑)。いずれにせよ海外に挑戦したい」

 レーンもリスグラシューの世界挑戦については「実際に香港で好勝負をしているし、どの国の競馬でも通用する」と太鼓判。また、矢作厩舎からは今年、オークスを制した3歳馬ラヴズオンリーユーも登場しており、牝馬2枚看板で“世界”をにらむ秋競馬となるだろう。アーモンドアイだけではない日本の牝馬のレベルの高さをアピールする、19年下半期はそんな世界の競馬シーンを期待してよさそうだ。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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