コパ・アメリカ2019連載

乾貴士が厳選する今大会必見のプレーヤー メッシ、スアレス、そして久保建英

構成:YOJI-GEN

ゴディンは結構やらかしていた印象が…

ウルグアイ代表にはリーガの選手が少なくない。乾は強力な前線を評価する一方で、実体験を踏まえてその弱点を指摘してくれた 【新井賢一】

――次はいよいよ、日本が入ったグループCですね。3連覇を狙うチリと11年大会で優勝したウルグアイ、そしてエクアドルと同居する非常に難しいグループになりました。どこが勝ち上がると思いますか?

 チリとウルグアイが妥当ですね。

――日本がそこに食い込むためには?

 カタールと同じで、やっぱりビビらずに行くことです。名前負けせず、負けて当然ぐらいの気持ちでやればいいんじゃないかな。大負けしないことも大事ですけど、そう考えていると何もできなくなってしまうので。

――では、まずはウルグアイから注目選手を挙げてください。

 やっぱりルイス・スアレスかな。

――どんな選手ですか?

 いい人です。めっちゃ優しい(笑)。いつもあいさつしてくれるし。噛み付き事件の印象がたぶん強いと思いますけど、スゴくいい奴なんですよ。

――プレーの特徴としては?

 点取り屋ですが、(前線で)キープもしてくれて守備も頑張ってくれるイメージがありますね。

――ここがうまいなと感じるところは?

 やっぱり動き出しじゃないですか。(ボールの)もらい方とかうまいですよね。

――前線にはエディンソン・カバーニもいます。

 スアレスよりも器用なイメージがあります。ロシアW杯もそうだったように、基本はカバーニとスアレスの2トップですが、強力ですよね。俺やったらもう、全部この2人に当てときますね、とりあえず(笑)。

──前線にはリーガでプレーしている選手が多いですね。マキシ・ゴメス(セルタ)にクリスティアン・ストゥアニ(ジローナ)もいます。

 スゴいね、FW。ひとりくらい日本に帰化せえへんかな(笑)。

――一方でディフェンスラインにはディエゴ・ゴディン、ホセ・ヒメネスという、アトレティコ・マドリーのセンターバックコンビがいます。

 とても良いコンビ。アトレティコの失点が少ないのは、この2人が頑張っているから。代表でも一緒にやれるというのはプラスだと思います。どちらも高い能力の持ち主ですが、結構がっつり行くのがヒメネスの役目で、ゴディンがちょっと様子を見てという感じ。ただ、ゴディンは昨シーズン、(パフォーマンスが)少し落ちちゃったんですよね。

――どういったところが?

 変なミスが増えましたね。昨シーズンだけだったのかもしれませんけど、結構やらかしていた印象があります。そこを突くのはひとつの手かと。

――チリはどうですか? 中心選手であるバルサのアルトゥーロ・ビダルのイメージは?

 もう「削り屋」っていうイメージですけど、バルサに行ってからうまくなっているというか。あのサッカーにすっかりなじみましたからね。

――やっぱりパワフル?

 相手からボールを奪って、そのまま自分で持ち上がって行きますよね。

――前線の柱、アレクシス・サンチェスは?

 強くて、速くて、うまい。すべてを兼ね備えているFWです。

――チリにはアラベスのチームメート、ギジェルモ・マリパンがいます。どんな選手なんですか?

 身体能力が高いですね。ジャンプ力とか半端ないし、足も速い。とても良いディフェンダ―ですね。

――チリの攻略法を伝授するなら?

 足下はそんなにないので、(あえて)ビルドアップさせたところを狙って取りに行く。そうやって慌てさせるのがいいんじゃないかなと思いますね。

岳が引っ張らないとチームは良くならない

乾が日本の注目選手に挙げたのは、やはり久保。「この半年で一気に成長しているイメージがある」と期待を寄せる 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

――では最後に、日本代表について聞きます。今大会で一番注目している選手は誰ですか?

 うーん……誰にしよう(笑)。でも、注目っていったらやっぱり久保(建英)君になるんでしょうね。

――最近の久保選手のプレーをどう見ていますか?

 この半年で一気に成長しているイメージがあるので、すごく楽しみですね。

――具体的にどのあたりが伸びていると?

 元々あった技術が、去年とかはあんまり出せていなかった感じでしたけど、今年はそれが出せるようになったかなと思います。

――なぜだと思いますか?

 もちろん自信もあると思いますし、あとは自分の中で出し方が分かったんじゃないですか。「あっ、ここではこの技術が使える」とか、そういうことが判断できるようになった。

――今回のコパ・アメリカで、久保選手にはどんなプレーを期待していますか?

 Jリーグでやっているプレーができれば、十分通用すると思います。外国人選手特有の伸びてくる長い足とか、そういうところに最初は戸惑うかもしれませんけど、いつも通りのプレーを見せてほしいですね。

――一緒にやってみたいですか?

 やってみたいですよ。面白そうですよね、周りをよく使える子なので。あとは(中島)翔哉かな。

――中島選手の「ここを見たほうがいいよ」というところは?

 翔也の一番の武器はドリブルですからね。3月のコロンビア戦(親善試合)で一緒にやりましたけど、キレが半端なかった。

――乾選手と少しプレースタイルが似ていませんか?

 俺、あそこまでのドリブラーじゃないですよ(笑)。

――でも、サッカー小僧っぷりでは負けていない。

 たぶん、俺よりサッカー小僧ですよ。だって俺、遠征先の公園までひとりでサッカーしに行きませんもん。あいつ、本当に行くらしいですからね(笑)。

――その他の若手でいうと、鹿島アントラーズの安部裕葵選手とか、印象はありますか?

 うまい選手だというイメージがありますね。でも、今年はあんまり試合に出られていないんですよね? でもだからこそ、この大会で世界を相手に戦って、良い経験をして、自信をつけてもらいたいですね。

――同じスペイン(ヘタフェ)でやっている柴崎岳選手については?

 たぶん、岳が引っ張っていかないと、このチームは良くならないし、試合にも勝てないと思っています。ピッチ上はもちろんそうですが、それ以外の部分でもあいつに引っ張って行ってもらいたいですね。

――今回は若手中心のメンバーでコパ・アメリカを戦うわけですが、森保一監督の狙いはどこにあると考えますか?

 来年は東京五輪がありますし、そこで南米のチームと戦う可能性があることも考えれば、この段階で若い選手たちに経験を積ませてあげるというのは、とても良いことだと思います。

――若い選手には今大会を通じて何を学んでほしいですか?

 きっと、自分にできることとできないことがはっきりすると思います。できることを見極め、たぶんできないことのほうが多いでしょうが、それとしっかり向き合い、また次の機会につなげてほしいですね。

――日本はグループステージを突破できますか?

 正直、難しいとは思います。それでも岳がいて、(川島)永嗣さんがいて、岡ちゃん(岡崎慎司)もいる。そうした経験豊富な選手の力を借りながら、若い選手たちが頑張ってくれればなと思います。

――代表の先輩として、久保選手をはじめとする東京五輪世代に、「代表の中ではこう振る舞え」といったアドバイスはありますか?

 岡ちゃんをイジっておけば大丈夫です(笑)。

――さすがに、できますかね?

 大丈夫です、誰でもできるんで(笑)。岡ちゃんもイジられてなんぼなので、逆にどんどんイジってあげてほしいですね(笑)。
乾貴士(いぬい・たかし)
1988年6月2日生まれ。滋賀県近江八幡市出身。局面打開力に優れたドリブラー。野洲高校2年時に選手権優勝を果たし、2007年に横浜F・マリノスに入団。セレッソ大阪を経て11年にドイツへと渡り、ボーフム、フランクフルトでプレーする。15年からスペインに活躍の場を移すと、16-17シーズン最終節には日本人として初めてバルサからゴールを奪う。昨シーズンはベティス、そして冬にレンタルで加入したアラベスでプレー。日本代表としては通算36試合・6得点。昨年のロシアW杯では2ゴールの活躍でチームのベスト16進出に貢献した。

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