乾貴士が厳選する今大会必見のプレーヤー メッシ、スアレス、そして久保建英
ゴディンは結構やらかしていた印象が…
ウルグアイ代表にはリーガの選手が少なくない。乾は強力な前線を評価する一方で、実体験を踏まえてその弱点を指摘してくれた 【新井賢一】
チリとウルグアイが妥当ですね。
――日本がそこに食い込むためには?
カタールと同じで、やっぱりビビらずに行くことです。名前負けせず、負けて当然ぐらいの気持ちでやればいいんじゃないかな。大負けしないことも大事ですけど、そう考えていると何もできなくなってしまうので。
――では、まずはウルグアイから注目選手を挙げてください。
やっぱりルイス・スアレスかな。
――どんな選手ですか?
いい人です。めっちゃ優しい(笑)。いつもあいさつしてくれるし。噛み付き事件の印象がたぶん強いと思いますけど、スゴくいい奴なんですよ。
――プレーの特徴としては?
点取り屋ですが、(前線で)キープもしてくれて守備も頑張ってくれるイメージがありますね。
――ここがうまいなと感じるところは?
やっぱり動き出しじゃないですか。(ボールの)もらい方とかうまいですよね。
――前線にはエディンソン・カバーニもいます。
スアレスよりも器用なイメージがあります。ロシアW杯もそうだったように、基本はカバーニとスアレスの2トップですが、強力ですよね。俺やったらもう、全部この2人に当てときますね、とりあえず(笑)。
──前線にはリーガでプレーしている選手が多いですね。マキシ・ゴメス(セルタ)にクリスティアン・ストゥアニ(ジローナ)もいます。
スゴいね、FW。ひとりくらい日本に帰化せえへんかな(笑)。
――一方でディフェンスラインにはディエゴ・ゴディン、ホセ・ヒメネスという、アトレティコ・マドリーのセンターバックコンビがいます。
とても良いコンビ。アトレティコの失点が少ないのは、この2人が頑張っているから。代表でも一緒にやれるというのはプラスだと思います。どちらも高い能力の持ち主ですが、結構がっつり行くのがヒメネスの役目で、ゴディンがちょっと様子を見てという感じ。ただ、ゴディンは昨シーズン、(パフォーマンスが)少し落ちちゃったんですよね。
――どういったところが?
変なミスが増えましたね。昨シーズンだけだったのかもしれませんけど、結構やらかしていた印象があります。そこを突くのはひとつの手かと。
――チリはどうですか? 中心選手であるバルサのアルトゥーロ・ビダルのイメージは?
もう「削り屋」っていうイメージですけど、バルサに行ってからうまくなっているというか。あのサッカーにすっかりなじみましたからね。
――やっぱりパワフル?
相手からボールを奪って、そのまま自分で持ち上がって行きますよね。
――前線の柱、アレクシス・サンチェスは?
強くて、速くて、うまい。すべてを兼ね備えているFWです。
――チリにはアラベスのチームメート、ギジェルモ・マリパンがいます。どんな選手なんですか?
身体能力が高いですね。ジャンプ力とか半端ないし、足も速い。とても良いディフェンダ―ですね。
――チリの攻略法を伝授するなら?
足下はそんなにないので、(あえて)ビルドアップさせたところを狙って取りに行く。そうやって慌てさせるのがいいんじゃないかなと思いますね。
岳が引っ張らないとチームは良くならない
乾が日本の注目選手に挙げたのは、やはり久保。「この半年で一気に成長しているイメージがある」と期待を寄せる 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
うーん……誰にしよう(笑)。でも、注目っていったらやっぱり久保(建英)君になるんでしょうね。
――最近の久保選手のプレーをどう見ていますか?
この半年で一気に成長しているイメージがあるので、すごく楽しみですね。
――具体的にどのあたりが伸びていると?
元々あった技術が、去年とかはあんまり出せていなかった感じでしたけど、今年はそれが出せるようになったかなと思います。
――なぜだと思いますか?
もちろん自信もあると思いますし、あとは自分の中で出し方が分かったんじゃないですか。「あっ、ここではこの技術が使える」とか、そういうことが判断できるようになった。
――今回のコパ・アメリカで、久保選手にはどんなプレーを期待していますか?
Jリーグでやっているプレーができれば、十分通用すると思います。外国人選手特有の伸びてくる長い足とか、そういうところに最初は戸惑うかもしれませんけど、いつも通りのプレーを見せてほしいですね。
――一緒にやってみたいですか?
やってみたいですよ。面白そうですよね、周りをよく使える子なので。あとは(中島)翔哉かな。
――中島選手の「ここを見たほうがいいよ」というところは?
翔也の一番の武器はドリブルですからね。3月のコロンビア戦(親善試合)で一緒にやりましたけど、キレが半端なかった。
――乾選手と少しプレースタイルが似ていませんか?
俺、あそこまでのドリブラーじゃないですよ(笑)。
――でも、サッカー小僧っぷりでは負けていない。
たぶん、俺よりサッカー小僧ですよ。だって俺、遠征先の公園までひとりでサッカーしに行きませんもん。あいつ、本当に行くらしいですからね(笑)。
――その他の若手でいうと、鹿島アントラーズの安部裕葵選手とか、印象はありますか?
うまい選手だというイメージがありますね。でも、今年はあんまり試合に出られていないんですよね? でもだからこそ、この大会で世界を相手に戦って、良い経験をして、自信をつけてもらいたいですね。
――同じスペイン(ヘタフェ)でやっている柴崎岳選手については?
たぶん、岳が引っ張っていかないと、このチームは良くならないし、試合にも勝てないと思っています。ピッチ上はもちろんそうですが、それ以外の部分でもあいつに引っ張って行ってもらいたいですね。
――今回は若手中心のメンバーでコパ・アメリカを戦うわけですが、森保一監督の狙いはどこにあると考えますか?
来年は東京五輪がありますし、そこで南米のチームと戦う可能性があることも考えれば、この段階で若い選手たちに経験を積ませてあげるというのは、とても良いことだと思います。
――若い選手には今大会を通じて何を学んでほしいですか?
きっと、自分にできることとできないことがはっきりすると思います。できることを見極め、たぶんできないことのほうが多いでしょうが、それとしっかり向き合い、また次の機会につなげてほしいですね。
――日本はグループステージを突破できますか?
正直、難しいとは思います。それでも岳がいて、(川島)永嗣さんがいて、岡ちゃん(岡崎慎司)もいる。そうした経験豊富な選手の力を借りながら、若い選手たちが頑張ってくれればなと思います。
――代表の先輩として、久保選手をはじめとする東京五輪世代に、「代表の中ではこう振る舞え」といったアドバイスはありますか?
岡ちゃんをイジっておけば大丈夫です(笑)。
――さすがに、できますかね?
大丈夫です、誰でもできるんで(笑)。岡ちゃんもイジられてなんぼなので、逆にどんどんイジってあげてほしいですね(笑)。
1988年6月2日生まれ。滋賀県近江八幡市出身。局面打開力に優れたドリブラー。野洲高校2年時に選手権優勝を果たし、2007年に横浜F・マリノスに入団。セレッソ大阪を経て11年にドイツへと渡り、ボーフム、フランクフルトでプレーする。15年からスペインに活躍の場を移すと、16-17シーズン最終節には日本人として初めてバルサからゴールを奪う。昨シーズンはベティス、そして冬にレンタルで加入したアラベスでプレー。日本代表としては通算36試合・6得点。昨年のロシアW杯では2ゴールの活躍でチームのベスト16進出に貢献した。