井上の圧勝劇を田中恒成はどう見たか 勝負の決め手は「左フックの角度」
田中が語る井上の「一番のすごさ」とは?
アマチュア時代から大きな期待を集め、その期待に応え続けてきたところ。それが田中の思う井上の「一番すごいところ」だ 【Getty Images】
特に連続1ラウンドKOで迎えた今回、周囲の期待を過剰に抱え込んでしまったことは、調子を崩し、1カ月間、スパーリングを休んだことにも表れている。
「周りも1ラウンドKOしかイメージが湧かないし、自分自身のなかでもどこかで1ラウンドで決めないといけない、という気持ちが出てくるなかで、ボクシングが崩れたということだったと思います。それでも最終的に心身ともに仕上げてきた印象が(試合前の)インタビューを見てもありましたし、間違いなく難しい精神状態のなかで、結局すべての試合で崩れていないというのが、すごいところですね」
高い能力を持っていても心が伴わなければ、力は発揮できない。加えて初のイギリスのリングで、現地での注目度の高さ、期待の大きさを感じながらの試合でもあった。その大舞台でも井上自身も口にした「平常心」に持っていけることこそ、“モンスター”なのかもしれない。
井上は「目指す場所を引き上げてくれる人」
インタビューに答えてくれた田中にとって、井上は「目指す場所を引き上げてくれる人」だという 【船橋真二郎】
「オレのなかで誰の試合より刺激を受けますね。近づきたい、超えたいと思いながら、どんどん差が広がって。よく言う『強い選手と戦い続けたい、ランキング下位じゃなくて、上位とやりたい』とか。尚弥さんは、そういう次元をさっさと卒業して、最先端をぶっちぎりで行っているので。オレも『こんなところを目指してちゃいけない』といつも思い知らされますし、目指す場所をいつも引き上げてくれる人ですね」