羽生結弦が好敵手・チェンから受けた刺激 追いつくには「練習しかない」
ノーミスで行っても…「完全に実力不足」
ショート、フリーいずれもノーミスだったとしても勝てたかどうか…羽生は「実力不足」を口にした 【写真:坂本清】
「自信を持って、もっと王者らしくいないとダメだなって、今日思いました」
確かにショートの羽生は精彩を欠いており、彼らしくなかった。その後、羽生はフリーまでの公式練習で4回転ループをひたすら跳び続ける。「周りからどういう目で見られようと関係なく、自分が絶対に納得できるまでやろう」と固く決意していた羽生の執念が、フリーでの4回転ループの成功につながったといえる。そして、フリーにおける羽生は五輪王者としての自信にあふれていた。
チェンの合計点は323.42、羽生の合計点は300.97、その差は22.45。チェンに追いつくには「練習しかない」と羽生は話す。
「ただの練習じゃなくて、いろんなことに着手していかないとダメだなというのをすごく感じています。もう既に、彼との差は地力が足りないことだと思っているので。彼に対して、リスペクトがあるからこそ勝ちたいなってすごく思うので、もっといろいろやりたいです」
「まず、ショート・フリー両方ともノーミスにすること。それに尽きるかなと思うんですけれど、(今回は)ショート・フリーをノーミスしても、多分ギリギリで勝てなかったと思うんですよ。完全に実力不足だなと思う」
チェンに敗れた悔しさを語る羽生は、でも何処か楽しそうでもあった。平昌五輪のプレ大会として行われた17年四大陸選手権でも羽生はチェンに敗れているが、直後に「楽しかったです」と言い、続けて次のように述べている。
「やはりネイサンの4回転の確率の高さ、怖さというものは、非常に感じながらフリーもショートもやりました。ただ、それが自分の限界を引き上げてくれることは間違いないですし、実際練習でもしたことがないようなことをやったので。さらに自分の中でレベルアップできたことを感じられるフリーだったなと思います」
この時、後半に予定していた4回転サルコウが2回転になり、羽生は後半3つ目のジャンプ、トリプルアクセル+3回転トウループの後にリカバリーとして4回転トウループを跳ぶという「練習でもしたことがない」究極の挑戦をしている。ここで自らの限界に挑んだ経験が、平昌五輪での連覇につながったともいえる。
「オリンピックこそが目指すべきゴール」
「オリンピックに勝ってこそチャンピオン」と話す羽生(左)。22年の北京五輪に向けて、好敵手・チェン(中)との高め合いは見ごたえがありそうだ 【写真:坂本清】
「もちろん足首の状態を見ながら、本当にいろいろなことを考えて、これから過ごしていきたいなと思っています。自分はオリンピックで2回勝つことができましたけれども、オリンピックは素晴らしいもの。やはりオリンピックこそが、競技者として、スポーツとしてのフィギュアスケートにおいて一番に目指すべきゴールで、それをとってこそチャンピオンだといえるんじゃないかな、と僕は思っているので。誰が北京オリンピックでチャンピオンになるのかを楽しみにしながら、これから過ごしたいなと思います」
その道の先に次の五輪があるのか否かは定かではないが、尊敬する好敵手・チェンの存在が、羽生をさらなる高みへ引き上げることは間違いないようだ。