イチローは「期待」を裏切れるのか? 固定観念に挑む、19年目のキャンプイン
いつもの流れも「大きな記念日」
現役復帰を果たし、メジャー19年目のキャンプインを迎えたイチロー 【写真は共同】
キャンプイン前日――イチロー(マリナーズ)が身体検査を受けたあとで、室内ケージで打撃練習を行い、フィールドでキャッチボールをするのは、長年のルーティンだ。イチローがクラブハウスから出てくると、外で待っていたメディアの私語が消え、静寂に包まれる。響くのはイチローの足音だけ。やがてケージからバットの乾いた音が漏れてきた。メジャー19年目となれば、取材する側も初めてではない。それでもこの日、この瞬間は例年、独特なものがある。
キャッチボールを始めた頃、球団がドローンを飛ばして、上空からの撮影を試みていた。そのわずかな羽音が、遠くに聞こえた。
そこだけを切り取れば、いつもの流れ。しかしイチローは、これまでとはまるで異なる思いで、初日を迎えていたという。
「ここにいる誰もそんなことは想像していないと思うけれど、僕にとっては大きな記念日です」
孤独を相手にしてきた5カ月
シーズンが終わって残した「できることは全部やった。1日(が終わって)帰る時にはもうくたくたでというのは、その日の目標でしたから。それをようやく……。そこだけを見れば完遂したということになるでしょうね」と言葉には、達成感さえ漂っていた。
もっとも、そんな境遇さえイチローは前向きに捉えていたというから、さすが。
「誰もやってきてないことに挑戦するということを、僕はいくつか結果としても残してきたことではある。誰かがやったことがあることよりは、誰もやったことがないことの方が飛び込んでいくという選択になる。それは常々してきたつもりだし、今回もその一つ。ユニークだし、特殊ではあるものの、その一つとして考えてますけれど」