なでしこ長谷川唯に見る、澤との共通点 一つひとつ築いた高い場所への「階段」

江橋よしのり

「大きな夢」をかなえるために「結果」を

中心選手として、表彰台のてっぺんへ。これからも「階段」を一段ずつ築いていく 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 壁にぶつかったとは思っていない――この感性が長谷川の特徴なのだろう。自分の実力が同級生のライバルに劣るとは思っていなかったはずだ。なぜ自分が選ばれないのかと、指導者に対して疑心暗鬼を抱いても不思議ではない。それでも彼女は、他人と自分の評価を比較することはなかった。自分が成長するために、課題を一つひとつ、着実にクリアしていくことに精力を注いだ。行く手を阻む壁に爪を立ててしがみつくのではなく、高い場所へ上るための「階段」を、自分の足元に一段ずつ築いていった。

 ちょうどこの頃、女子サッカー界のレジェンド澤穂希は、著書『夢をかなえる。』で「夢のレンガを積み上げる」という表現を用い、日頃の地道な努力の大切さを説いている。

「壁は一気に乗り越えられなくても、階段だったら上れそうだと思いませんか?」(澤)

 長谷川も同じように、日々、自分を向上させることに意識を注ぎ、道を拓いてきたのだろう。間もなく成果は現れ始めた。

「その結果すごく成長できました。この年(12年)のU−17女子W杯(アゼルバイジャン大会)では『ブロンズボール』という個人表彰を受けたことも、自信になりました。この1年は、私のサッカー人生のターニングポイントになったと思っています」

 その2年後、14年のU−17女子W杯(コスタリカ大会)にも出場して、長谷川はチームをけん引。個人表彰『シルバーボール』とともに、今度はチームも世界一に導いた。帰国後、彼女はこの優勝を「大きな夢の途中の通過点」と位置付けた。大きな夢とは、もちろんなでしこジャパンで表彰台のてっぺんに立つことだ。

「自分はまだ、なでしこジャパンの中心選手にまではなれていないと思っているので、しっかり存在感を出せるようになりたいです。自分で打開してシュートまで持っていく力をつけるために、しっかりトレーニングしていこうと取り組んでいます。そして、女子サッカーが今後、世間の人に注目してもらえる競技になるために、日本のみなさんが注目する東京五輪で結果を出したいです。これからの女子サッカーを担う世代のために、いい環境が用意されるよう、私たち現役の選手は結果を出すことが求められていると思います」

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著者プロフィール

ライター、女子サッカー解説者、FIFA女子Players of the year投票ジャーナリスト。主な著作に『世界一のあきらめない心』(小学館)、『サッカーなら、どんな障がいも越えられる』(講談社)、『伝記 人見絹枝』(学研)、シリーズ小説『イナズマイレブン』『猫ピッチャー』(いずれも小学館)など。構成者として『佐々木則夫 なでしこ力』『澤穂希 夢をかなえる。』『安藤梢 KOZUEメソッド』も手がける。

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