日本とベトナム、それぞれのGS突破 日々是亜洲杯2019(1月16日)

宇都宮徹壱

「勝って1位でグループ突破を目指す」日本

日本対ウズベキスタンが行われるハリファ・インターナショナル・スタジアム。背景に大自然の岩肌が見える 【宇都宮徹壱】

 アジアカップ12日目。この日は一挙に4試合が予定されていた。グループCは韓国対中国(アブダビ)とキルギス対フィリピン(ドバイ)で、いずれも17時30分(現地時間、以下同)キックオフ。グループDはベトナム対イエメン(アルアイン)とイラン対イラク(ドバイ)で、こちらは20時に行われる。どちらのグループも、勝ち点の並びが「6−6−0−0」となっており、いずれのカードも上位対決と下位対決。この日はベトナム対イエメンを取材予定だったが、その前にウズベキスタン戦を前日に控えた、日本代表の会見とトレーニングがセッティングされていた。今日は長い一日になりそうだ。

 森保一監督の前日会見。記者の一番の関心事は「ウズベキスタン戦のメンバーを大幅に変えるかどうか」であった。グループFも「6−6−0−0」の状況で、勝ち点6を手にしている日本とウズベキスタン、どちらが1位抜けをするかが決まる(現時点では得失点差でウズベキスタンが1位)。日本は引き分け以下だと2位通過となり、アルアインに残ってオーストラリアと対戦。勝てば1位通過となり、シャルジャに移動してサウジアラビアもしくはカタールが相手となる。そうした状況を踏まえて、森保監督は第3戦をどのように戦おうと考えているのだろうか。

「明日の試合はこれまでの2戦から、選手を多く変えて臨もうと思っています。練習でもミーティングでも試合の振り返りをやっていますが、実際にピッチに立って選手同士のフィーリングが合うかどうかが大切だと思います。そして明日のゲームの中でも、対戦相手との状況を考えながらすり合わせていくことを、選手にはトライしてもらいたいと思っています」

 その上で森保監督は「勝って1位でグループ突破を目指す」とも語っている。が、おそらく本心ではないだろう。必勝体制で臨まなくてもよい第3戦では、これまでに出場した選手を休ませ、控えの選手を中心としたメンバー構成となるようだ。決勝まであと5試合あることを考えるなら、出番がなかった選手を実戦の雰囲気に慣らせておく必要がある。もっとも、ウズベキスタン戦で活躍した選手が、ラウンド16以降でも起用されるチャンスがあるかどうかは「微妙」と言わざるを得ない。今大会での日本代表は、われわれが想像していた以上に、スタメンとサブの序列が明確化しているように感じられる。

勝ち点3を手にして「吉報を待つ」ベトナム

3位突破を懸けて大声援を送るベトナムのサポーター。得点が決まるたびにビッグフラッグが出現した 【宇都宮徹壱】

 17時30分キックオフのグループCの2試合は、韓国が中国に2−0、キルギスがフィリピンに3−1で勝利。この結果、1位韓国、2位中国、3位キルギス、4位フィリピンとなった。20時からは、ハッザーア・ビン・ザーイド・スタジアムで行われる、ベトナム対イエメンを取材。2万5965人収容のスタンドは空席が目立つなか、ベトナム人のサポーターがバックスタンドの一角を真っ赤に染めて声援を送っていた。ベトナムもイエメンも2戦2敗ながら、この第3戦に勝利すれば3位抜けの可能性が出てくる。ただし得失点差はベトナムが−3でイエメンが−8。後者はかなり厳しい状況である。

 実力的にはベトナムが有利と予想していたが、イエメンもしっかりパスで組み立てながら攻撃の形を作る。そして、どちらも守備の時は5バック。このグループにはイランとイラクという2強がいて、2弱の彼らはディフェンスの枚数を増やすことで抵抗を試みてきた。その戦術は第3戦にも持ち込まれ、両者とも決め手を欠きながら時間が過ぎてゆく。そんな中、試合が動いたのは前半38分。相手ペナルティーエリア手前でFKを得たベトナムは、グエン・クアン・ハイが短い助走から左足の一振りでゴールにたたき込む。それは今大会、初めて目にする直接FKによるゴールであった。

 1点リードで折り返したベトナムは、ファン・バン・ドゥックがペナルティーエリアで倒されてPKのチャンスを得る。これをキャプテンのクエ・ゴック・ハイが、相手GKのタイミングを巧みに外すキックでネットを揺らし、後半20分に追加点。イエメンも後半12分と28分、いずれもアフメド・アルサロリが惜しいシュートを放つも、わずかに枠を外れた。その後もイエメンは、最後まで「諦めの悪い弱者」としての振る舞いを見せるも、奮闘虚しくタイムアップ。ベトナムはセットプレー2本を決めて勝ち点3を手にし、イエメンは3戦全敗、0得点10失点で初めてのアジアカップを終えた。

 裏の試合は、イランとイラクが0−0で引き分け、グループCは1位イラン、2位イラク、3位ベトナム、4位イエメンで確定。この時点でベトナムは、バーレーン、キルギスに次ぐ3位チームとなった。「すべては明日の結果次第。吉報がもたらされることを期待している」と神妙な表情で語るのは、ベトナム代表のパク・ハンソ監督。得失点差で3位抜けの可能性を残す、レバノンとオマーンの動向をベトナム国民は固唾(かたず)をのんで見守ることだろう。すでにラウンド16進出が決まっているわれわれには、絶対に味わうことのできない感覚。13日間にわたるグループステージの戦いも、残すところあと1日となった。
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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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