連載:輝く舞台をつくる「影の立役者」

辰巳がスイマーの聖地と呼ばれる理由とは “北島康介の次の時代”を支える仕事

和田拓也
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記録が出やすいのは中央のコース。選手にとってのベストなポジションなのだという 【撮影:黒羽政士】

 アスリートたちが輝く数々の大舞台。歴史的な記録誕生の瞬間や、心を揺さぶる名場面の裏には、それらを支える“影の立役者”の存在があった。当連載は、これまであまり語られてこなかった彼らの戦いに迫る。

 第1回は東京辰巳国際水泳場。競技関係者の間では“辰巳”の名で親しまれ、日本中の競泳者たちが憧れるプールである。あの北島康介をはじめ多くのスターアスリートを育み、日本競泳界を盛り立ててきた東京辰巳国際水泳場。そこには、世界へと羽ばたいていく競泳者たちを見守ってきた、影の立役者がいた。

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 昨年の11月9日から、3日間にわたって開催された競泳の世界大会、「FINAスイミングワールドカップ2018」。女子100メートルバタフライにおいて、池江璃花子が、世界女王のサラ・ショーストロムを下したことで水泳界の話題を大きくさらった。またその一方で、中国の徐嘉余が男子100メートル背泳ぎで世界新記録、男子100メートル個人メドレーはロシアのV・モロゾフが世界タイ記録をマークした大会でもあった。

 会場は「東京辰巳国際水泳場」。競泳者の誰もが目指す、通称「スイマーの聖地」だ。

 1993年、代々木オリンピックプールに代わる日本の水泳競技の中心的施設としてオープン以降、さまざまなドラマと記録が生まれた辰巳は、今冬から改修工事が始まった。2020年の東京オリンピックに向けて、最新の施設「オリンピックアクアティクスセンター」が新たにオープン予定とされるなか、水泳界のひとつの時代を築いたスイマーの聖地は、25年間、選手の泳ぎと観客の熱狂をどのように支えてきたのか。東京辰巳国際水泳場 副館長・中村勝さんに話を伺った。

「プールの匂いがしないプール」の秘密

辰巳国際水泳場のメインプール。テレビで観るのとでは、桁違いの開放感だ 【撮影:黒羽政士】

 東京辰巳国際水泳場の中に入り、想像以上に高い天井と広い会場、そして25年の年月が経っているとは思えないほどの綺麗な施設に驚いた。またすぐに、「プールの匂いがしない」ということに気付く。

「塩素臭がほとんどしないでしょう?」と中村さん。

「定められた範囲内で、塩素臭がしないように細かく管理しています。また塩素の濃度だけでなく、水質、水温もそこに関わってきます」

 水温が高いと塩素臭が強くなり、選手や観客のモチベーションに関わる。また水温は、選手のパフォーマンスにも大きく影響するのだそうだ。
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著者プロフィール

カルチャーメディアを中心に執筆・編集・撮影を行う、ライター・編集者。ひとを前進させるカルチャーの根っこと端っこを探しています。ドキュメンタリーの映像制作やサッカーメディア「DEAR Magazine」の運営も行う。

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