忘れた頃の“ニホンピロ” 「競馬巴投げ!第182回」1万円馬券勝負
しかし感心したのは水道局からの請求書である
[写真1]クリノガウディー 【写真:乗峯栄一】
「えらいこっちゃ」と慌てて修理業者に連絡してタンク一式替えた。痛い出費だった。
しかし感心したのは水道局からの請求書である。
「使用量がいつもより多くなっております。こちらで出来る範囲のチェックはしてみましたが、原因を確認できておりません。一度、水道局までご連絡いただけますか」と書いてあった。
確かに水道使用量というのは、月によって、そう急激に変化するものではないだろう。「ウチは今月からミソギ家族だ。風呂は朝・昼・晩、食前食後、日に六回入る」とか、「カネが余った。トイレの水は小便一回に付き十回流せ」とか、そんな家はめったにないだろう。
でもこの水道局の心遣いは嬉しい。「見ていてくれてるんだ」という感じがあった。
先日の国会で、“水道民営化”が可能になったという話だが、もし民営化するのなら、窓口には深田恭子をズラッと並べて欲しい。「深田恭子が見ていてくれる」のなら、水道料金、少々高くなってもかまわない。
深田恭子に「何か漏れてない?」と説教されてみたい
[写真2]ケイデンスコール 【写真:乗峯栄一】
もう30年近く、何度も言っているが、JRAに求められている社会貢献とは、落胆し、自暴自棄になっている男(あるいは女)へのケアだ。客の銀行強盗転落を防がねばならない。
タバコ会社は自社製品に「健康を損なう恐れがある」と警告を入れる。
サラ金CMも「ご利用は計画的に」と売上げ抑制テロップを入れる。
企業としてはタバコを売りたいし、カネを貸したいはずだが、こういう警告を発して社会秩序安寧に寄与する。それが長い目でみれば企業の信用となる。
犯罪者は必ず馬券負け組から生まれる。数百万儲けて帰る人間は銀行強盗はしない。JRAはここをしっかり考えないといけない。
「あ、田中さん、元気ですか?」
今日も午前中から入れ込んでいる田中さんに、深田恭子が声を掛ける。ピンクの上っ張りには「ケースワーカー・深田恭子」の名札が見える。
どうしてオレの名前が分かるんだと驚いてはいけない。深田恭子にはA−18区画の常連客二千人すべての名前がインプットされている。
「あのね、田中さん、少しいい?」と深田恭子は田中さんを柱の陰に連れて行く。
「今月購買料が増えてるみたいだけど、何かあったの?」
「いや」
「お願い、何かあるんだったら、恭子に言ってみて」
深田恭子の手は田中さんの手の上に置かれ、瞳は既に潤んでいる。
「嫁が、“能なし、ヤドロク”とか見下げやがるもんだから……、クーゥ、いまに見てろ」
田中さんは恭子の手を握ったまま、嗚咽する。
「いけない、田中さん、自暴自棄になっちゃ。ねえ、競馬場じゃ、わたしのこと奥さんだって考えてくれない? だめ? 恭子じゃ」
ああ、深田恭子がケースワーカーなら、競馬個人収支、全部知られたってかまわない。オレなんかの個人情報なら、全部、深田恭子に打ち明けたい。
「乗峯さん、失礼ですけど、おたくの水道、どこか漏れてませんか?」と言ってくる水道局のように、一度でいいから、深田恭子に手を握られて「乗峯さん、大丈夫? 何か漏れてない?」と説教されてみたい。