スペイン代表が抱える最大の問題とは? ネーションズリーグで繰り返した失望

凋落のきっかけはペレス会長の決断

先日のネーションズリーグ・クロアチア戦で敗れるなど、W杯以降なかなか思うようにいかないスペイン代表 【写真:ロイター/アフロ】

 わずか半年前、スペイン代表は2度目のワールドカップ(W杯)制覇が期待される優勝候補の一角と見られていた。ロシア大会に先立ち、多くのアンケートにおいて出場32カ国が形成するピラミッドの頂点に位置付けられていた背景には、EURO2016以降に残してきた輝かしい軌跡があった。

 それを台無しにしたのがレアル・マドリーのフロレンティーノ・ペレス会長が行った間の悪い決断だった。W杯後にジュレン・ロペテギを招へいするのは自由ながら、彼はそれを大会開幕の直前という最悪のタイミングで公表すべきではなかった。

 これが引き金となり、ロペテギは2日後に迫っていたW杯初戦を前にスペイン代表監督を解任された。公表の有無についてロペテギに直接の責任はない。だが自身にとってもスペインフットボール界にとっても極めて重要な大会の直前に、更新したばかりのスペインフットボール協会(RFEF)との契約を無視してレアル・マドリーと交渉を行ったこと自体、裏切り行為と取られても仕方がなかった。

ルイス・エンリケ就任後も明確な意図は見て取れず

W杯後に就任したルイス・エンリケ監督。9月のネーションズリーグこそ連勝で華々しいスタートを切ったが、その後は連敗。ファイナル4を逃している 【写真:ロイター/アフロ】

 あれから半年が経過した現在も、スペイン代表はロペテギの解任騒動で生じたショックから完全に立ち直ることができていない。凡庸(ぼんよう)なパフォーマンスに終始したロシア大会後にはルイス・エンリケが新監督に就任したが、まだ彼が目指すフットボールも十分に表現されてはいない。

 ルイス・エンリケはバルセロナを率いて輝かしい成功を手にした監督だが、まだ彼はトップレベルのチームを率いるのに十分な手腕を証明してきたとは言えない。UEFAネーションズリーグでイングランドとクロアチアを破った9月の初陣こそ素晴らしいスタートを切った。だがその後チームは2連敗してファイナル4進出を逃しただけでなく、何よりどう戦いたいのか明確な意図が見て取れず、ただ個の力に頼ったプレーに終始してきた。

 ルイス・エンリケはバルセロナ時代も同様に、攻めてはリオネル・メッシやルイス・スアレス、守ってはジェラール・ピケやマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンの個の力を頼りに、多くの試合を解決してきた。1年目のシーズン半ば、アノエタでレアル・ソシエダに敗れた直後にメッシと激しい口論を繰り広げて以降は、ピッチ内外で衝突を恐れず我を貫くという信念を捨て去り、選手たちの意向を受け入れることで結果を出すようになった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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