スペイン代表が抱える最大の問題とは? ネーションズリーグで繰り返した失望

バルサからレアル&プレミア勢がベースに

長らくスペイン代表を支えたイニエスタも退き、変化を強いられようとしている 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 だがスペイン代表においては、就任時から解決すべき大きな問題が立ちはだかった。2008年から12年にかけ、W杯と2度のEUROを勝ち取ったチームの中心選手たちがキャリアの晩年を迎えたことだ。

 イケル・カシージャスが代表から遠ざかって久しく、ピケとアンドレス・イニエスタ、ダビド・シルバもW杯後にラ・ロハ(スペイン代表の愛称)からの引退を表明した今、当時のメンバーは残りわずかとなってしまった。そこに異なる特徴を持った新たな世代が加わることで、ラ・ロハのフットボールも変化を強いられようとしている。

 当時のラ・ロハは横パスを丁寧につなぐスタイルをベースに、前線にFWを並べるのではなく、2列目の選手が前線のスペースに侵入していく形でチャンスを作り出していた。ただ、われわれは08年から12年にかけての成功は唯一無二の選手たちが成し遂げた異例の出来事であり、ジョゼップ・グアルディオラ率いるバルセロナのようにフットボール史上最高のチームだったのだと考える必要がある。

 時が経ち、今ではそのバルセロナもかつての輝きをすっかり失ってしまった。近年はマドリーの2チーム、とりわけレアル・マドリーがヨーロッパの覇権を握るようになり、スペイン代表のベースもレアル・マドリーやプレミアリーグ所属の選手で構成されるようになっている。

ポゼッションか、効率性重視か

今はまだ試行錯誤の段階だが、来年からはEURO2020の予選がスタート。一刻も早くチームの方向性を定めたいところだ 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 ザグレブのクロアチア戦(現地15日)で終了間際に勝ち越しゴールを決められていなければ、恐らくスペインは来夏のファイナル4に進出できていただろう。だがチームが抱える問題は、現時点までの試合結果にあるわけではない。

 スペイン代表が抱える最大の問題。それはチームの方向性が明確に定まっていないことだ。グアルディオラの理念に基づき、ルイス・アラゴネスとビセンテ・デルボスケが貫いたポゼッションスタイルを維持するのか。それともより実用的で効率性を重視したプレーを目指すのか。そしてその場合、どのようなタイプの選手が必要になるのか。

 今はまだ試行錯誤の段階にあるが、来年にはEURO2020の予選がはじまる。ルイス・エンリケはそれまでに明確な答えを見いださなければならない。

 ファイナル4進出の有無は別にして、ルイス・エンリケはバルセロナでの1年目にも露呈した一貫性の欠如を垣間見せはじめた。それはこの先、長く曲がりくねった道のりがスペイン代表を待ち受けていることを指し示している。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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