広島1位の報徳学園・小園、躍進の裏側 丈夫な体を作った母の献身的な支え
「人生で一番緊張した」ドラフト
広島1位の指名を受けて家族で記念撮影する小園 【沢井史】
「夢だったドラフト1位がかなってうれしいです」
会見の壇上に上がった時は、今までにないほどこわばった表情を見せていた。“人生で一番緊張した”という運命の日、4球団の競合の末、晴れて広島の指名を受けた。
名門・報徳学園では1年春からレギュラー。下級生時から類いまれなポテンシャルを見せつけ、2年連続でU18侍ジャパンとしてもプレー。早くからドラフト上位候補として注目されていた。小園の魅力は俊足と強肩を生かした守備範囲の広さ。50メートル5秒9の快足を飛ばして、果敢に次の塁を狙う走塁は、昨春のセンバツでも実証済みだ。冬の食事改善とトレーニングを重ねて3年生になると体がひと回り大きくなり、長打力がアップした。今秋のU18侍ジャパンとして大学日本代表の壮行試合では日本体育大の松本航(埼玉西武ドラフト1位)からホームランを放つなど木のバットへの対応力は悪くない。夏の甲子園敗退後は木のバットで練習を重ね、福井国体でも木のバットを使用。慣れない木への準備も着々と進んでいる。
そんな小園をずっと支えてきたのは母・こず江さんだ。こず江さんもかつて女子サッカー選手としてプレーした経歴を持つ元アスリート。昨冬、息子が体重を増やすために「海斗は朝からボリュームのあるものを好むので」と朝食メニューに工夫を重ね、酷暑だった真夏でも敢えてこってりとしたメニューを食卓に並べた。ちなみに今夏、好評だったのはビビンバ丼。
「一緒に食べる私まで体重が増えてしまいました」と苦笑いするが、実は小園は今まで大きなケガをほとんどしたことがない。小学校1年から野球を始めたが、ケガや違和感などで戦列を離れた経験もないのだ。「こうやって満足な状態でプレーできたのは家族のお陰。丈夫な体にしてくれて感謝しています」と、本人も母の献身的な支えなしではここまで来られなかったと痛感している。
中学からの球友は涙のエール
中学からのチームメイトで、今年は「4番・主将」としてチームをけん引した神頭(写真右)は、小園の活躍に「驚きはしない」と語る 【写真は共同】
「小園は小学校の時のチームの規定で自分たちより(枚方ボーイズに)入ってくるのが遅くて中1の夏に初めて来たんですけれど、最初から動きが違っていました。自分たちより後に入ったのに、入部してすぐ先輩と一緒にプレーするようになって。3年生になってもチームの看板みたいなバッターで、(チームメイトの)藤原(恭大・大阪桐蔭/千葉ロッテドラフト1位指名)と1、2番コンビでした。どちらかが必ず塁に出てくれるし、足の速さは2人が断トツ。もう、あの2人は周りより抜けていましたね」
小園とは地元の高校で甲子園に出たいと報徳学園を選び、ともに入学。小園は入学後間もなくスタメンに名を連ねるようになり、神頭も1年秋から一塁手のレギュラーになった。躍動する小園の姿を見て、「こうなるとは思っていたので驚かなかった」と話す。ドラフト会議中は「自分のことのようにうれしかった」と目を潤ませ喜んだ球友は「小園の活躍は今後の自分の目標になります。自分も同じ舞台で、今度は対戦してみたいです。まずはチームを代表する選手になって欲しいです」とエールを送る。
もちろん本人も指名されただけで浮かれてはいない。「プロはもっと厳しい世界。今そのために体を作って、準備はしていきたいです」。今は宮崎翔コーチから与えられたメニューを連日こなしながら体作りに徹している。
「夢はトリプルスリーを獲れる選手。プロでの練習や生活に早く慣れるように、今からやれることは何でもやっておきます」
昨秋は70キロ後半だった体重は現在84キロになり、数字以上に体の幹がどっしりしたようにも見える。報徳学園のスクールカラーの緑から、広島の赤が似合う選手を目指し、今日も黙々とトレーニングに励んでいる。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ