「練習の質」を武器に、走り続けて優勝へ HCに聞く、○○はうちがNo.1 広島編

大島和人

新生ドラゴンフライズは「60試合走り続ける」

今季から加入した岡本飛竜を中心に、トランジションで走り勝つバスケットを目指す 【(C)B.LEAGUE】

 広島ドラゴンフライズが「三度目の正直」を懸けて迎える2018−19シーズンだ。2016−17シーズンには昇格寸前まで勝ち進んだが、B2プレーオフ準決勝、B1・B2入替戦でともに敗れて昇格を逃した。昨シーズンは西地区3位にとどまり、昇格争いに絡めずシーズンを終えている。ジェイミー・アンドリセビッチ・ヘッドコーチ(HC)は前半戦で解任され、朝山正悟が選手兼任で指揮を執っていた。

 今シーズンは広島出身で、横浜ビー・コルセアーズのHCも務めた尺野将太氏が新HCに就任。再スタートの機が熟した印象を受ける。

 尺野HCに「ウチのナンバーワン」を尋ねると「練習からハードにやり合うというところ」という答えが返ってきた。彼はこう口にする。

「昨シーズンB1でやっていた選手が多く、B1レベルの質の高い練習ができる」

 昨シーズンの広島は鵤誠司(現栃木ブレックス)の移籍もあり、司令塔不在に悩まされた。しかし今季はポイントガード(PG)に岡本飛竜(前島根スサノオマジック)、山田謙治(前横浜ビー・コルセアーズ)を補強し、指揮官の目指すスタイルにフィットする人材をダブルで得た。

 尺野HCは新生ドラゴンフライズが目指すスタイルをこう述べる。

「まずはトランジションでしっかり走れるチームにしたい。『ディフェンスで頑張って走る』というようなことはどこも言うと思うけれど、それを本当に60試合続けてやっていきたい」

 積極的に相手ボールへプレッシャーをかけ、試合のテンポを上げるバスケを目指せば、選手の消耗は大きくなる。そこで大切になるのはスタイルに合った人材をしっかり選び、誰がコートに立っても質が落ちないグループを作ることだ。尺野HCはそこについても、こう太鼓判を押す。

「ウチはメンバーが交代しても力があまり落ちないし、誰が出ても持ち味を生かしながら戦っていける。アップテンポでアグレッシブなバスケを、全員でできると思います。選手は10分間プレーし続けるなんてことができないような勢いでやってほしい」

目標は昇格ではなく「リーグ優勝」

 シューターでエースの朝山正悟(37歳)は尺野HCより年上。ベテランにとってアグレッシブなスタイルは適応が難しくも思えるが、指揮官はそれを否定する。そして彼らへの期待をこう述べる。

「ベテラン2人の調子が一番いいくらい。オフシーズンからしっかりトレーニングされてきている。年齢関係なくチームの中で一番活躍が期待できる」

 PGの2人以外にも大きな補強があった。小澤智将は大卒2年目と若く、ハードな守備を売りにするシューティングガードだが、川崎ブレイブサンダースではほとんどプレータイムを得られなかった。尺野HCに小澤のことを尋ねると想定外の評価が返ってきた。

「何と言っていいか分からないんですけれど、ちょっと独特のリズムで……。ひょいひょいとうまくすり抜ける選手です。ドライブは独特のタイミングでフィニッシュまでいけるので、オフェンスも期待できる」

 今季のBリーグは帰化選手がオン・ザ・コート数の制限を受けずにプレーできるようになったため、帰化選手を活用できれば大きなアドバンテージになる。新加入の坂本ジェイは206センチ・105キロのインサイドプレーヤー。セネガル生まれだが延岡学園高、浜松大出身で、2013年に日本国籍を取得している。腰の負傷のため直近の2シーズンをほぼ棒に振ったが、今季のプレシーズンはチームの練習メニューを問題なく消化中だ。9月上旬のアーリーカップは2試合とも20分弱のプレータイムをこなしており、コンディションは問題ない。

 尺野HCの掲げる目標は「昇格」でなく「リーグ優勝」だ。新加入選手の顔ぶれを見れば、それを狙えるだけの選手層が確保されている。指揮官が質の高い練習を誇るのも、それだけハイレベルな人材が切磋琢磨(せっさたくま)しているからだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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